過去ログ - 佐久間まゆ「まがいもの」
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102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:56:30.12 ID:DL0z8tZuo
「私のこと、『まゆ』って呼んでくれませんか」

「別に構わないけど……」

「……まゆを置いてかないで下さいね」
以下略



103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:57:00.55 ID:DL0z8tZuo
 ――――

 その日は予報が外れて、午後から雨が降り出した。
 天気が予報を裏切ったのか、それとも逆か。

以下略



104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:57:27.32 ID:DL0z8tZuo
「もしもし、プロデューサーさん」

「……まゆ、どうしたの」

 彼に名前を呼ばれると、思わず頬が緩んでしまう。
以下略



105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:58:04.64 ID:DL0z8tZuo
「じゃあ、迎えに行くよ」

「そんな、悪いです」

 いかにも申し訳なさそうな声を出すけれど、嬉しくてしょうがなかった。
以下略



106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:58:48.61 ID:DL0z8tZuo
 はっきりと私を責めているのが分かった。
 私は鞄を抱えて、忍ちゃんの傍を通り過ぎた。
 教室を出ると湿った空気が少しだけ冷たかった。

 プロデューサーさんの車はすぐに学校へ来てくれた。
以下略



107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:59:27.79 ID:DL0z8tZuo
「少なくとも、僕はまゆのファンだよ」

 彼はそう言って、にこっと笑った。
 笑い返そうとしたところで、彼の手に光る銀色に私は凍りついた。
 彼は左手の薬指に指輪をしていた。
以下略



108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:59:57.06 ID:DL0z8tZuo
 ――――

 夢うつつの波打ち際で、私は渚を見つめていた。
 色のない空と海が遠くで太陽に焦がれている。

以下略



109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 08:00:42.16 ID:DL0z8tZuo
 ――――

 目を開けたとき、部屋は暗かった。
 雨が降っているのか、微かにヒスノイズのような音が聞こえる。
 カーテンを開ける気にもなれず、私は布団にくるまって、浅い眠りの残り香を吸い込んだ。
以下略



110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 08:01:08.09 ID:DL0z8tZuo
 微睡んでは覚めてを幾度も繰り返すうち、私は時間を忘れた。
 そっと顔を出して見ると、カーテンの隙間から鳥の鳴く声が届いた。

 雨は止んだのかしら。

以下略



111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 08:01:34.15 ID:DL0z8tZuo
 薄暗い部屋へ入ると、忍ちゃんは私のすぐ隣へ腰を下ろした。
 制服と寝間着が隣り合うのはなぜだか、不思議だと私は思った。

 忍ちゃんは口を開かなかった。ためらいがちに同じ空気を呼吸して、私は夢うつつに呟いた。

以下略



112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 08:02:16.31 ID:DL0z8tZuo
「……マドギワさんがかわいそうだよ」

 皮膚の下で黒く冷たい後悔に血管が萎縮した。
 どうして。私は彼に焦がれていたけれど、彼は私のことなど考えてくれなかった。
 そうでなかったら、どうして私に黙って他の誰かと――。
以下略



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