過去ログ - 【モバマス】「橘ありすの十四日間戦争」【橘ありす×市原仁奈】
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3:名無しNIPPER[saga]
2014/12/24(水) 22:44:53.11 ID:YqYwLBdl0
「少し、痩せましたか。桃華」

「ご冗談を。今日、入院したばかりですわよ」

 私を見返す桃華が、穏やかに微笑みます。

「制服、よくお似合いですわ。ありすはもう、中学生でしたわね。早いですわ」

「何を、いまさら。お姉さんぶってるつもりですか」

 気恥ずかしさから、ぷいと顔を背けます。

「事実、そうでしょう」

「少しばかり誕生日が早いだけで、威張られても困ります」

 その時ふと、枕元の脇にあるテーブルに置かれた、見舞いの品々が目に入ります。

 数冊の本、リップクリーム、ウェットティッシュ、お茶のペットボトル。

 プロデューサーの抜け目なさが、なんだか少し腹立たしいです。

 私は気持ちを落ち着けようと、ふーっと息を吐き出しました。

 この、つかみどころのない、かすかな怒りは、きっと、ままならない自分自身への苛立ちなんでしょう。

「手ぶらですみません。こういう時、お見舞いの品を持ってくるのが礼儀だとは、分かっているんですが。なにぶん、突然のことでしたから。驚いてしまって」

 桃華が入院したというメールが、プロデューサーから届いたのは、下駄箱で外履きに履き替えていた時です。

 ただ、疲れが溜まっていただけで、何も心配することはない。

 落ち着け。

 見舞いに来るなら電車とバスをこう乗り継げばいい。

 私が動揺しないよう、言葉と時間を選んでくれたことが分かる文章でした。

 そうまでしてもらっても、しばらく呆然と立ち尽くしてしまった自分が、情けない。

「お気になさらず。と、いいますか、こんな大事な時期に入院なんて、わたくし、自分を恥じますわ。プロデューサーにも、ありすにも、迷惑をかけてしまって……」

「馬鹿なこと、言うもんじゃないです。今はゆっくり休んで、体を治してください」

「ですけど……」

 歯切れの悪い返事を聞いて、はたと私は気づきました。

 私たちは、二週間後のクリスマスに催されるライブイベントに、二人組のユニットとしての参加が決まっています。

 その日に向けて、私自身、練習を重ねてきました。

 桃華は言うまでもなく……というか、根を詰めすぎていましたから、こうなる前から、ずっと心配していたんです。

「顔が怖いですわよ。そんなので……ファンの前に立てますの」

 桃華が不安そうに表情を歪めたのに、私は足の震えを止めるのに精一杯でした。

 私の、ばか。


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