53: ◆IWuyJvzLOZKF[saga]
2015/01/25(日) 09:51:07.96 ID:D6PZ2FqV0
「うっ」
化け物の顔はまるで人間のようだった。
ただしそれを完全に人の顔と形容するのはあまりにも憚られる違いが大きい。
不気味に蠢き続ける白い瞳孔に、口からは触手のように飛び出した多数の細い管。
そんなグロテスクな存在を前にして上条は吐き気を覚える。
それが例え想像であっても許されないような、人に不快感を催すだけの歪な存在。
「お願いだ、助けてくれええぇぇ!!」
必死に助けを求める男性と目が合った。
この状況から何よりも連想されるのは『死』のイメージ。
実際に化け物に襲われている男性だけじゃない。
上条もこの場に溢れる現実味を帯びない異様な雰囲気に、死というものを間近に感じ取っていた。
「頼む、見捨てないで!!」
思わず後ずさっていた上条に、男性の悲痛な叫びが追い打ちを掛ける。
助けてと言われたって、こんな状況でどうしろって言うんだ?
見ず知らずの男のために、あんな化け物に立ち向かえって言うのか?
上条の中で様々な思いが去来する。
考えが甘過ぎた。
別に上条は美琴を救い出してヒーローになりたかった訳じゃない。
ただ美琴の善意を知りながら、放っておくことができなかっただけだ。
それがこんな非現実的な事態に直面する羽目になるなんて……。
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