55: ◆IWuyJvzLOZKF[saga]
2015/01/25(日) 09:52:35.62 ID:D6PZ2FqV0
ジュルルルルルル
上条の右脚に大顎を突き刺す化け物の姿があった。
あまりの痛みと恐怖に上条は声にならない悲鳴を上げる。
そして上条は縋る思いで顔を上げるが、
「ははっ」
こんな状況であるにも拘らず、上条は小さな笑いを零す。
男性はチラッと一瞬だけこちらを振り返るが、足を止めるようなことはなかった。
そのまま男性は上条からみるみる遠ざかっていき、すぐにその姿は見えなくなってしまう。
助けを期待するのが恩着せがましいことだとは分かっている。
それでも、ほんの少しでも躊躇う素振りさえ見せてくれたら救われるものもあっただろうに……。
ズブリと音を立て、上条の脹脛から化け物の大顎が引き抜かれる。
しかしこの脚では逃げ切ることができないのを上条は悟っていた。
何よりその気力が湧いてこない。
美琴を助けに来た筈が、見つけることもできないまま人知れず死んでいく。
思えば電話であの男が言っていたことは全て正しかった。
何の力もないのに、自分から首を突っ込むような真似をして。
ヒーローなんかにはなれないと思いつつも、そのくせ実際はヒーローを気取っていただけなのかもしれない。
(まあ偽善使いにお似合いの最期ってことかもな)
化け物は上条の背中を這い、乗りかかってくる。
奇しくもその体勢は先ほどの男性と全く同じだった。
その悍ましい感覚に反して、あれほど感じていた恐怖は次第に収まっていく。
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