81: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/07(土) 00:28:02.09 ID:EyJ2ILMk0
提灯一つ無い路地は、日が沈みますと恐ろしいほど暗く、一寸先も見えないほどです。
衣擦れの音や、何かを踏みしめる音など、人の気配は感じるのですが、肝心の人の姿は見えません。
まるで、あやかしか何かが目蓋の裏を這っているかのようで……気分が悪くなりました。
早くこの場を離れなければ……気持ちは急くのですが、どうにもなりません。
せめて、せめて何かこの暗闇を進むための、標でもあれば……と思った時です。
82: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/07(土) 00:30:26.49 ID:EyJ2ILMk0
明かりは古い提灯から漏れ出ておりまして、どうやら誰かがそれを点けたようでした。
そして、その継ぎ接ぎだらけの提灯の元には……乞食爺が立っていたのです。
妾はギョッとしましたが、爺は妾の事ナンゾ、知らぬフリです。
歯の抜けた口を歪ませて、楽しそうに……明かりの元でアヤツリ人形を踊らせているのです。
83: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/07(土) 00:33:13.67 ID:EyJ2ILMk0
「……かこイつウけてエ――。あアいに――来たンやら。ソオレ、みンなみンなァ――。……ヘヘヘ、オてェ――にィ――……いれまするウ……やンややンや……」
「ヘ――イ。このタンビは私めの踊りのおセキにイ――。お立ちいただきイ……イタク感謝を……ヘッヘッヘ……嫁エ――をオ……狐にばやりましテ……チッチッチッチ……」
振り袖の人形が爺の外題に合わせて踊り狂うのですが、その見事な事……。
84: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/07(土) 00:35:45.62 ID:EyJ2ILMk0
思わず見入ってしまいますと、お爺さんも汗を拭き拭きシャ嗄れた声を絞りました。
話も佳境です。人形はまるで生きてるかのように、自在に踊りを見せました。
妾は固唾を呑んで見守っておりました。
すると、その時です。
85: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/07(土) 00:37:57.03 ID:EyJ2ILMk0
チットモ動かなくなったので、妾は心配になり、お爺さんに話しかけようとしました。
しかし……それは叶いませんでした。
お爺さんは、血走った目をイッパイに開いて、人形を見つめていたからです。
その形相の怖かった事……。
86: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/07(土) 00:40:10.53 ID:EyJ2ILMk0
妾は背筋に冷たいモノを感じ、爺から離れました。
暗闇に目を凝らして、またも訳もわからぬ道を探りさぐり進む事にしました。
爺がどうなったのかは、それっきり知りません。
上手に糸を繋ぎ直して、薄明かりの中踊り続けているのか……。
87: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/07(土) 00:41:47.97 ID:EyJ2ILMk0
いいえ、きっと……。
……死んでしまったのでしょうね。
……ホホホホホホホホ……。
88:名無しNIPPER[sage]
2015/02/10(火) 18:00:16.60 ID:nDqLrQzx0
乙
89:名無しNIPPER[sage]
2015/02/10(火) 18:56:59.92 ID:74w7GzbXo
毎回これで終わってもいいような続いてもいいような感じ
90: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/26(木) 23:30:47.77 ID:MBaWhPHO0
4
それにしても、腹が空きました。
妾は少しばかり田舎の出で、俗世には疎い身ではあります。
しかしながら、父母様が妾をお叱りになる内容を今一度振り返ってみますと、淑女としての教育はシッカリなされていたように思います。
91: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/02/26(木) 23:37:16.02 ID:MBaWhPHO0
ふと、なにやら良い匂いがする事に気が付きます。
肉が煮える匂いです。
骨から出汁が流れ出て、それが肉へと染み込み、じゅおっと旨みが溢れ出る……そんな匂いです。
誰かが鍋で肉を煮ているのです。
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