18:名無しNIPPER[saga]
2015/01/11(日) 03:49:50.25 ID:BgkC1b+qO
「……まったく、人吉君。虫はこの程度のこともわからないのかい?」
と、そんな人吉に対して阿久根は憎々しむことも馬鹿馬鹿しくなるほどの整った笑顔で罵った。
「なっ、いきなり何を」
「いきなり何を、じゃないよ。君だってこの手紙を、封筒を一通り見ただろう?」
「そりゃ見ましたけど……だからこそ分からないっすよ。手紙の内容は、なんか、媚びたデザインの紙に多少頭が緩そうな回りくどい文で『クッキーづくりを手伝って欲しい』ってことが見辛い色使いで書いてあっただけじゃないですか。封筒も『目安箱へ』って書かれた普通の封筒ですし……いや、シールこそありましたけど」
「君も結構言うね……でもそこまで分かっているなら、どうして解けないのかな」
阿久根はむしろ、困ったという表情で言葉を続ける。
「いいかい、君が言った媚びた紙やら見辛い色使い、ということから推測できるようにこの手紙を書いたのは女子だ……そして相当のお洒落さんだね」
「そりゃ、わかりますよ。わかりきってますよ、だから……」
「『だからこそ』、そんなコがこんな地味な普通の封筒にいれるのは変だろう? 可愛らしい便箋のハズさ、いれるならね」
「偶々じゃないですか? 無かったとか」
「確かにそうとも考えられる。けれど、こうは考えられないかい? 万が一にも外見から彼女自身の投書と判断がつかないように、お洒落を最小限に抑えた。とね」
「判断?」
「そう、回りくどい文章も含めて考えると……彼女自身この依頼をあまり知られたくない、秘匿したいという思いがあるのだと感じたよ。特にこの裏面に書かれた『目安箱へ』という文字、これは万が一に落としたとき、中身を確認させないための文字通りキーワードだ。何も書かれていなければ開けて確認するからね、ましてやそれが興味引かれるようなラブレターとも見紛うほどの可愛らしい便箋なら余計さ」
「じゃあ依頼人はそこまで考えれるほどの頭のいい人ってわけですか」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。意識的か無意識かもわからないが、そういうことは考慮しておいて損するものじゃないということさ」
「めだかちゃんも同じように感じたのか?」
「ああ、私も同じように推理した。それに私は女子だぞ? 女子力でその程度見抜くのは容易い」
人吉は改めてそのようなことを一瞬で感じ取れる阿久根の特別さと。
人の気持ちを感じるのではなく、推理できる黒神の異常さに。
確かな壁を感じるのだった。
女子で特別なのに何もわからなかった喜界島は隅で拗ねていた。
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