過去ログ - 澪「ずっと、あなたが好きだった。」
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15:名無しNIPPER[saga]
2015/01/15(木) 22:37:49.02 ID:Y0jxl3IJ0
そんな私と反対に彼は…私の「恋人」はそうではなかった。
たぶん…本当に恋をしていた。
彼は…今になって思えば…強い愛情を注いでくれていたんだと思う。
いつも私を楽しませようと精一杯頑張ってくれていた。
そして、 私が微笑むと、本当にしあわせそうに笑ってくれた。
私は人として彼に好意を持っていた。
彼となら、ずっと一緒にいてもいいかもしれない。
それくらい彼に好意を持っていたのだ。
けれど、それでも。
私は彼に恋をしていたわけではなかった。
私は「男女交際」という舞台の上で、恋人役を演じているだけだった。
あるとき彼はこういった。
『キミが何を考えているかわからない』。
彼の私に向ける熱情に対して、私の彼への態度は、実に冷静であり続けた。
次第に彼は、私の自分に対する愛情の注ぎ方に不満と不信を募らせていった。
彼は誠実だったんだろう。そして賢明だった。
私が自分に対して恋情を持っていないこと、今後も持つ可能性がないことを悟った彼は、自ら幕引きを買って出た。
どうやら私は、与えられた役を上手く演じられていなかったみたいだ。
「恋人」という役柄を上手く演じきれば、
「結婚」という次の舞台に上がることを許される。
それは世の中の約束事。
けれど私は失敗した。
こうして、大学卒業を前にして私は初めての恋人と別れることになった。
私は一滴の涙も流さなかった。
みんなは泣くこともできないくらいショックだったのだ、と思ったのか、
やさしい言葉をかけ、慰めてくれた。律は一晩中側にいてくれた。
でも私はちっとも悲しくなかったのだ。
だって私は「失恋」していないもの。
私は「まともに」生きることを願った。
外れることが怖かったから。
レールに乗って。
自然に。普通に。
「まともな」恋がしたい。
人一倍恋に憧れていたはず私は、外れることを恐れ、自分の恋に背中を向けた。
それとは反対の遠いところへ、必死に走ってゆこうとしていた。
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