7: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/01/16(金) 20:23:19.45 ID:6UJ3zAla0
「なあ、まだかよ暦」
いい加減痺れを切らしたのか、結城が扉からひょっこりと顔だけ出して呼んでいた。
「ああ、もう行くよ。さ、橘」
まだ難しい顔をしている橘を促す。
言いたいことは山程あるが、これ以上問い詰めたところでつまらない説教になるだけだ。
橘だって根はいい子だし、頭も人一倍いいんだ。
時間をかけて絡まった糸をほぐすように解決していくとしよう。
「そういや暦、今日の仕事はなんなんだ?」
「ええと……そうだな、確か……ジュニアブライド?」
「……ジューンブライドでしょう。なんですかその犯罪的な響きは」
特にプロデューサーが言うと冗談で済みませんよ、なんて言う橘。
この辛辣ロリめ。
先程は結城の手によって阻まれたが、また隙を見ては対八九寺用にと編み出したハラスメント奥義をお見舞いしてくれようか。
「じゅ、じゅん……? なんだそれ?」
「まあ! もしかしてドレスが着られるんですの?」
「ああ、純白の本物だぞ櫻井」
「それは素晴らしいですわ!」
なお、今更だがこの仕事は以前に橘が受けたことのあるものでもある。
前回、橘のウェディング姿が好評だったため、もう一度橘と近い年齢のアイドルを、とオファーが回って来たのだ。
何でもこの結婚自体が少なくなってきている時代、花嫁相手の商売だけでは狭いシェアの取り合いで息継ぎもままならないらしい。
その為、若い子相手のファッションやイベントとしての売り込みのため、小学生から高校生の間でモデルが欲しい、とのことだった。
そこで小学生組に選ばれたのがうちの事務所、という流れである。
確かに、小さい頃からウェディングに憧れさせる、というのも戦略として頷ける。
頷ける……が、やはり違和感は拭えないのは僕だけではないだろう。
だがまあ、その会社の決断も大概だが、僕としては嬉しい限りなので文句は無しとしておこう。
「ドレス……?」
「花嫁衣装だよ」
「ばっ、オレがそんなもん着てどうするんだよ!オレは絶対着ないからな!」
「もう遅い。それに僕の急所を狙い、消えないトラウマを植え付けた重罪を忘れたか」
「あれはアンタの自業自得だろうが!」
「女の子にはわからんかも知れないがな……あれは本当に……地獄の痛みなんだぞ……!」
「そ、そうか……そりゃ悪かったけどよ……」
ちなみに櫻井と結城を選んだのにも理由がある。
櫻井は言うまでもなく文句無しでウェディングドレスが似合うのは容易に予想できるし、結城は逆にミスマッチを狙っての人選だ。
ギャップ萌えは大切だよね。
それを狙って何度、向井と結城に殴られたか、両手では数えきれないほどだが。
「いやあ、結城と櫻井の花嫁姿は楽しみだなあ」
「うふ、わたくし楽しみですわ」
「オレは帰るからな!」
「ここに来た時点でお前の負けだ、諦めろ結城」
「ちょっ、は、放せこの野郎!はーなーせー!」
「はぁ……」
呆れているのか溜息をつく橘の横で暴れる結城をお姫様抱っこで捕獲すると、僕らは事務所を後にしたのだった。
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