過去ログ - 【艦これSS】提督「壊れた艦娘と過ごす日々」04【安価】
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845: ◆oeBS4v7bwY[saga sage]
2015/01/25(日) 23:20:43.99 ID:/iKqaLico

伊58「……?」

 滝のような雨の中に紛れて、何かの音が響く。

 一発二発とそれらが続き、彼女はそれが砲弾によるものだと察知した。

 少しばかり彼女の体に緊張が走る。

 砲弾は自分に向けた物ではないというのもすぐに分かったが、仕方なく流れ弾が来ないとも限らない。

 進む速度を目一杯下げ、その場で停止しながら辺りを見回す。

 灰色の空からは無数の雨粒が降り注ぎ、目を凝らすもやはり砲弾の微かな音位しか聞こえない。

 迂回しようにもまずどこで撃ち合いをしているのかが分からない以上、下手に動いても巻き込まれる可能性も考えられた。

 彼女は賢くはなかったが、自らそんな状況に首を突っ込む程の無謀者でもなかった。

 息を殺す様にして兎のように耳をそばだてる。

 やがて徐々に音が鮮明になり始め、と同時に視界に霧のようなぼんやりとした誰かの姿を発見した。

 それは深海棲艦ではなく艦娘で、しかも一人ではなかった。その事に胸を撫で下ろし、いっそ合流でもさせてもらおうかと考えた矢先、信じられないことが起こった。

伊58「──えっ?」

 彼女の前で、艦娘の身体を砲弾が貫いた。

 呆気なく、受け身もとらずにその艦娘が海に倒れる。

 突然の事に口を開けたまま呆然とした彼女だったが、止まずに響く砲弾の音にはっとした。

 そして気がつけば、思いの外に自分が近くまで迫ってしまっていたことに気がついた。

 彼女自身は止まっていたつもりでも、ゆっくりと潮に流されて引き寄せられていたのだ。

 これでは、本当に流れ弾に巻き込まれかねない。そう思い、辺りを再度見回す。

 そんな彼女の視界の中を、必死の形相で別の艦娘が走る。

 それこそが、後に会う榛名であり、そして海に倒れたのが大和ではあるが、この時の彼女にそれを知る術はなかった。

 ただ彼女からしてみれば、艦娘が艦娘に──もっと言ってしまえば、大和が榛名に撃たれた、という事実だけが降って湧いたのだ。


 大和。榛名。そして、伊58。

 奇妙な縁の如く、三角形を描くように、三人の糸が繋がっていた。 

 尤も、その頂点の一つは、後に別の彼に変わるけれども。


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