134: ◆TI638OYiZI[sage saga]
2015/02/01(日) 23:11:51.53 ID:BPoS8XS7o
それから、いくつかの他愛無い会話を交わした。修学旅行の思い出、橘君が買っていった
お土産を食べ過ぎて、お腹を壊した妹さんの話。当然仕事は進捗せず、気が付くと予鈴が
鳴っていた。
「この音を聞くのも久しぶりだね」
「うん、そうね」
「じゃあ僕、席に戻るよ」
そう言うと橘君は、くるりと背を向け、自席へと引き返していった。
……自分が何故、あのような行動に出たのか、よくわからない。
「ねえ、橘君!」
あたしは咄嗟に立ち上がり、橘君を呼び止めていた。
「なに? 絢辻さん」
振り向いた橘君の顔を、うまく見据えることが出来ない。自分が妙なことを口走ろうと
していると、わかっていたからだろうか。
あたしが言葉に詰まっていると橘君が、
「どうかした?」
と訊ねてくれた。それでも、あたしは口を開くことが出来ない。「絢辻詞」には、
言えやしない。
「……ううん、なんでもないの。お土産、ありがとう」
あたしに橘君を呼び止めさせた何かは、不意に訪れ、そして去った。
148Res/91.58 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。