136: ◆WnJdwN8j0.[saga]
2015/02/18(水) 10:55:14.24 ID:kRpik67K0
この家にもう、彼の痕跡は残っていない。
それでも彼と過ごした時のことは今でも鮮明に思い出せる。
彼と過ごした日々はそれだけ自分にとって大事だったのだと、彼と離れてから実感していた。
…どうしてだろう。
いなくなってから大分経つのに、彼のことをすぐに思い出す。
『帰ったぞ』
今にでも、そう言う声が聞こえそうな気がして。
『馬鹿でも風邪ってひくんだな』
そんな皮肉を言いながらも、彼なら不器用に看病をしてくれそうで。
それで私の風邪が治った頃には彼が風邪を引いて、今度は私が看病する番になったりして…
僧侶「…ふふ」
そんな光景が容易に想像できて、自然と笑みがこぼれた。
僧侶「ゴホッ」
それにしても今回の風邪は本当にしつこい。
訪問の医師が来るのはいつの予定だっけ?もう、寝てばかりで時間の感覚を思い出せない。
ガチャリ
僧侶「…ん」
ドアの開く気配がした。足音が近付いてきている。
あぁ、医者が来るのは今日だったか。
起き上がろうとするが、どうも体に力が入らない。失礼だけど、寝たまま対応させてもらおう。
僧侶「どうぞー…」
「帰ったぞ」
僧侶「…え?」
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