48: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:53:00.74 ID:xhFcsLfTo
喰えば死、されど喰わずとも死。
黒服はEへ銃口を向けながら秒読みを開始した。
CとDが固唾を呑む中、Eは不敵な笑みを浮かべると躊躇なくチョコを噛み砕いた。
49: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:54:03.53 ID:xhFcsLfTo
ピタリ、と、不意を突いたように絶叫が止む。
Eは最後に一度だけ体を大きくのけ反らせ、そして動かなくなった。
「回収だ」
50: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:55:21.37 ID:xhFcsLfTo
二人は震える手足で床から椅子によじ登った。
その間に回収役の二人が部屋に入り、Eを左右から持ち上げる。
その時だった。
51: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:56:22.97 ID:xhFcsLfTo
黒服は踵を返すと部屋の隅で立ち止まり、小声で何やら呟き始めた。
初めての事例らしく、回収の二人も互いに顔を見合わせては、何処か落ち着かない様子であった。
「はい。……はい」
52: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:57:00.32 ID:xhFcsLfTo
缶は再びCの手に。振ればガラガラと音がする。中身は確実に減っていた。
逆さにすれば出たのは赤。
乾いた口をどうにか濡らし、喉の奥まで押し込んだ。
53: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:57:38.69 ID:xhFcsLfTo
Eは震える腕を缶に伸ばした。
命を繋いだとはいえ、劇薬は確実にその命を蝕んでいた。
少し持ち上げたところで缶が滑り、丸卓の上に倒してしまう。
54: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:58:14.85 ID:xhFcsLfTo
その後の展開は、ただの焼き直しと言って良い。
ただ一つ、結末だけを除いては。
55: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:58:56.10 ID:xhFcsLfTo
× × C D ×
56: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:59:37.96 ID:xhFcsLfTo
「さて、残るは二人か。
缶の中身も少なくなったようだし、最後に特別なモノを用意した」
言って黒服が取り出したのは『サクマ式ドロップス』。外見に目立った差異は見られない。
57: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:00:35.93 ID:xhFcsLfTo
『サクマ式ハッカドロップス』。
知る人ぞ知る、ハッカのみをしこたま詰め込んだ極悪非道の商品である。
割合で言えば、通常の『サクマ式ドロップス』にはハッカが八分の一入っている。
58: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:01:35.75 ID:xhFcsLfTo
こんな商品は在ってはならない。きっと人を不幸にする。
だが奴らのように人の不幸を蜜とすすり、それを商売とする者たちであれば
このようなシノギに手を出しても何ら良心を傷めない。
59: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:02:29.08 ID:xhFcsLfTo
Cは缶を逆さに構えた。そして軽く左右する。だがどうした事か、玉は一向に落ちてこない。
手間取っている事を利用して上目で穴を盗み見ると、そこには白い影がチラリと覗いていた。
Cは高鳴る心臓を押さえ、動揺を悟られぬよう、逆へ逆へと缶を振る。
60: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:03:38.30 ID:xhFcsLfTo
「早くしろ」
訝しんだ黒服が近付き、缶諸共Cの手を掴み上げる。
そのまま強く振り回されると、白い玉が一つ、丸卓へゆっくりと落下を始めた。
61: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:04:36.07 ID:xhFcsLfTo
その声に自我が戻った。身を乗り出して玉を掴む。
「にぃ……」
だが判別している時間は無い。喰え!
62: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:06:13.84 ID:xhFcsLfTo
「ぁぁぁぁぁ……」
嗚咽にも似た息を吐き、Cは涙の浮かぶ目を二度しばたかせた。
口一杯に広がる酸味と塩味。極寒とは程遠い、温かな甘み。
63: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:06:56.80 ID:xhFcsLfTo
『サクマ式ハッカドロップス』には二色ある。これは現物を見た者しか知り得ないだろう。
一色目は馴染みの白。そして二色目は――――、緑。
本来のパッケージにはその両色が載っているが、
64: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:07:36.02 ID:xhFcsLfTo
「おめでとう、君が勝者だ」
部屋中にしわがれた声が響き渡る。
「これで一千万は君のものとなった。我々も非常に楽しませてもらったよ」
65: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 21:10:17.96 ID:xhFcsLfTo
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
そしてご指摘ありがとうございます。
玉の種類を間違えていたので>>41は以下になります。
66:名無しNIPPER[sage]
2015/02/08(日) 21:38:04.06 ID:cjKECYHEO
面白かった おつ
67:名無しNIPPER[sage]
2015/02/08(日) 21:39:25.64 ID:qF3j30rJo
すっぱいレモンに〜なら、一時期パッケージでハズレを判別出来る様になってたな
68:名無しNIPPER[sage]
2015/02/08(日) 22:08:34.36 ID:fwJaRn6to
メーカーから怒られるだろ、これw
68Res/28.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。