過去ログ - 【ラブライブ!】user名:泥だらけのハイヒールを履いた元踊り子のための薬用石鹸
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/02/09(月) 21:59:46.92 ID:dwilK1n2O
8. 救われなければ、救えない

希ちゃんは2年生の頃のにこにーを思い出す。

次々とアイドル研究部の部員が止めていき、1人ぼっちに慣れてしまったにこにー。
その寂しげな背中、でも、誰にも泣き言1つ言わない背中。
孤立しそうになっても誰にも媚びずに自分自身をへし曲げず、
でもそれが故、
自分で自分をどんどんと人目のつかない場所へと追いやってしまった、

にこにーを思った。

希ちゃんはずっと、同情からでもなく憐れみからでもなく、もっと暖かいものでその背中を支えてあげたいと思っていた。
そして、そんな風に思いながら本当の意味では何もできずに立ち尽くすことしかできていなかった自分を許すことができなかった。

「......にこっち、私、待ってたよ。にこっちがまた誰かと同じ目線で何かを楽しめるようになること」

「なによ、そんな大げさなこと言って」

「大げさなんかじゃない。私は、にこっちのこと、見てるだけしかできなかったから」

希ちゃんが悔しそうに口を結ぶ。

「でも、えりちなら、きっと。だって、にこっちとえりち、やっぱそっくりだもん」

その希ちゃんの言葉ににこにーはムッとして、抱きしめていた腕を緩め、
希ちゃんの額にパンッとデコピンを1発食らわせた。

「いたっ!?」

「見てるだけしかできなかっただなんて、認識を改めなさい。にこに、希は話しかけてくれたじゃない。それってすごいことなのよ。私をこうして変えてしまうくらいに」

「変える......」

「希と出会わなければ、私はきっと石鹸叩きをして終わった自尊心拗らせたクソバカ女で終わってただろうから」

だから、だから、ね、と、にこにーは言葉を切れさせながらも続ける。

にこにーはこんな風に他人に気持ちを告げたいと思う自分の気持ちが信じられなかった。
それでも、この胸に確かにある、この温かなものを、伝えなければこの先、希ちゃんと一緒に肩を並べることはできないと、なぜか思ったのだ。

恥ずかしさと緊張感、そして若干の恐怖が入り混じる歌詞が、
矢澤にこにーの声という旋律に乗る。

「私をミューズと出会わせてくれてありがとう、希」

希ちゃんはこんな風に誰かに感謝の思いを伝えられたことがなかったから、
思わず、そんなつもりなんか全くなかったのに、
そんな言葉をもらえて、涙が止まらなくなった。

「泣かないでよ、そんな風に一方的に泣かれるとなんか私が悪者みたいじゃない」

「にこっちのデコピンが痛すぎたんだもん......」

「それなら、仕方ないわね」

にこはにこっと笑ってさらに続けた。

「希。自信を持ちなさい。あなたには人を変える力がある、あなたと出会わなければ、私はこんなことしようだなんて、思わなかったわ......うん。感謝しないとね」

希ちゃんはにこにーの左手に小銃が握られているのに気づいた。

「今度はにこが、今もなお華麗にハイヒール役をこなしているもうひとりのポンコツに一発食らわせて、その高さから引きずり下ろしてやるわよ」

「......にこっち」

自分の名前を心配そうに呼ぶ、希ちゃんをとてもありがたいと、にこにーは思った。
ようやく理解する。
こんな風に希に心配されているあいつは、うん、そうね。
希の言う通り、にこに似ているのかもしれない。

だから、他でもないにこがーーーやらなければいけないんだ。

「覚悟しなさいよね。絢瀬絵里......!!」

「それはなんとも......」

スピリチュアルやね

希ちゃんの決め台詞が部室に響き渡った。


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