過去ログ - [オリジナル] The Five Elements 〜New Contract Peach Warrior〜 
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25:名無しNIPPER[sage saga]
2015/02/14(土) 10:40:26.53 ID:638Opjkd0
「――はぁ」

 雲一つない春の青空。
 遠く、遠く彼方まで広がる青。
 どこかから風に乗って運ばれてきた桜の花びらが足元へ落ちる。

「はぁ……」

 空はこんなにも青く、世界は広いのに。

「何してるんだろう…… 俺は」

 手すりに手を置き、下界を見渡す。

――昼休み。

 思い悩む最低な俺を置き去りにして時間は容赦なく経過していく。
 あれから翌日、気付けば午前の授業が終わっていた。
 いつもなら千春が弁当を作ってくれて、それを教室で食べているところなのに――

――屋上。

 春の優しい風が頬をなぞる。
 片手に持つのは購買で買った一個の調理パン。
 食欲はあまりない。

 昨夜千春と喧嘩して(喧嘩と言うより俺が一方的に責め立てただけであるが)、彼女と顔を合わせられなかった。
 俺は逃げるようにして千春より早く家を出て学校へ来た。そして同じく逃げるように屋上へ駆け込んだ…… 口も利いていない。朝飯も食べていない。
 食事が喉を通るような状態でもなかった。

 大切な存在である千春からも俺は逃げた。
 そしていわれのない罵詈雑言も浴びせてしまった。
 優しい彼女だ。俺が言ったことで自分を責めてしまっているかもしれない。
 そう分かっているのに…… 俺は――

「さいて――」
「――ようっす和間!! 今日は屋上にいたのか!!」

 口癖になりつつある「最低だ」を呟いた時。
 屋上の入り口扉がギギギ…… と開いて誰かが飛び出してきた。

「君は――」
「ったく…… もう一週間以上経ったのに 君 はないだろよ和間」

 両手を腰に当て堂々と立つ男子生徒。

「――朱彦…… くん?」
「アケヒコ、でいい」

 ニヤリと笑う朱彦。
 彼は同じクラスで俺の後ろの席だった。

「おいおい…… 屋上で食うなら俺にも言えよな!」

 朱彦は前後の席順という関係もあってか何かと俺に絡んでくる。
 クラスの中でも目立つ存在で、背の高さと比例して態度もデカい。
 良く言えばムードメーカー、悪く言えばお調子者。
 そんな人間だった。
 交友関係は広いようで、既に人気者の座を確立しつつある……
 昼は一緒に食べる、そんな約束をしてもいないのに、果たして何の用だろうか。

「何か用かな?」
「お前…… ちょっとクール過ぎるぜ…… あのな、昼飯を一緒に食ってる仲だろうが!」
「――え?」
「えっ…… じゃねぇよ!」

 特にこれといった友人もいない俺は、初めから現在まで自分の席で昼食を食べていた。
 思い起こしてみると…… 確かに朱彦も友人はたくさんいるはずなのに何故か自分の席で食べていて、そして俺に絡んでいた。別に約束もしていないのに。

「ったく、酷いぜ…… それが友達にすることか!」
「――友達!?」
「それも否定する気かよ!!」
「あはっ…… はははは!」
「和間…… あんたは悪魔だ」

 友達、か。
 こんな俺を「友達」と呼んでくれた――
 あまりにも自然に言うので、かえって違和感を覚えてしまった。

 久しく感じることがなかった感情が流れて、久しく笑うことのなかった俺は笑う。


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