11:名無しNIPPER[saga]
2015/02/20(金) 02:39:03.04 ID:YN4vLNeW0
彼女を見送ることなく私は部屋に戻った。
二人分の部屋だったその部屋は、昨日とはまるで打って変わってしまっていた。
姉の私物がなく、あるのは私の私物だけ。
ぽっかりと空いてしまった部屋のスペースと同様、私の心にも穴が空いてしまっている。
最愛の姉との別れ。その現実にまだ夢を見ているようだった。
荷を積んだ車のエンジン音がこの部屋にも聞こえてくる。
「――――」
「―――――」
「――――――」
何か外では騒いでいるようだが、エンジン音がそれを遮る。
その音を聞きたくないからと、私は布団に潜った。
このまま眠ってしまえば。また午前零時頃を過ぎれば。
大好きな姉が私の布団に潜り込んできて。そのまま抱き合って。
またいつもと変わらぬ朝を迎えられるはずだから。
それでも、何もなく朝はやってきた。
私は、布団の中で音を立てずに泣いた。
「お姉ちゃん…」
最愛の人がいたはずの部屋で、最愛の人が離れてしまった現実に、ただただ声を震わせた。
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