16:名無しNIPPER[saga]
2015/02/23(月) 15:27:14.08 ID:zW0LuoBg0
しばらく歩いていたら、体も段々とあったまってきた。
腕を解いて彼の隣を歩く、すぐ隣に立つのはなんだか恥ずかしい気がして、一歩だけ引いて。
腕を組むとかは別にいいんだけどな、なんでだろう。
それに気付いて彼がこっちを向く。
じっと私の目を見つめてくる、今度の彼の瞳は確かに私を見ていた。
……す、少し、落ち着かない。
「輝子はなんで、事務所に、行きたいんだ?」
感情の感じさせない抑揚のない声で、彼が言の葉を切るようにそう質問してきた。
なんで? り、理由がいるのか。
理由なんて知らん、特に思いつかん……。
私はただ、ふとそう思っただけなんだ。
なんとなくまた行ってみたくなった。本当にそれだけ。
「……そうか」
彼が再び前を向く。
なんとなく、そんな言葉で納得してくれただろうか。
彼の歩く速度は変わらずゆっくりだったけど、それでも私は置いてかれるような気がして、慌てて袖を掴む。
「もう、三年も経つんだな」
小さな呟き。
なんて答えたらいいか分からなくて、私は聞こえなかったフリをした。
42Res/32.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。