27: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 21:17:04.03 ID:DLa1I0Qh0
「どうして、阿良々木さんはあっちに……来たの?」
ことが全て終わって、一つだけ残った疑問点。
影縫さんと斧乃木ちゃんは仕事で来たとして、阿良々木さんは現状を何も聞かされていなかった。
阿良々木さんは、過去何度も似たような体験をして来た、とも聞いた。
なら、未知の怪異に対する怖さも、知っていたはずなのに。
そんな状態で来るなんて、阿良々木さんには悪いけれど、猛獣の巣に裸で飛び込むようなもの?
「ああ……それは、な」
少々の逡巡の末、まあいいか、なんて頭を掻きながら、阿良々木さんは言った。
「涼と日高の件があったから知った、ってのもあるけど……水瀬にな、尻を引っ叩かれたんだよ」
「伊織さん……が?」
「水谷には言うな、って言われてたんだけどな……水谷を助けてやって欲しい、水谷は辛いことがあっても何でも自分で抱え込む癖があるから、助けてやってくれって。僕ならそれが出来る、って」
「…………」
伊織さん……わたしのこと、気にかけてくれてたんだ。
宿借にまつわる一連の出来事が済んだ後、一番に伊織さんから電話がかかってきたのだ。
その時の会話は何ら変わる事のない、いつもの伊織さんだったけれど。
少し……ううん、とても嬉しい。
「僕は元々、日高と涼を通して知ってしまったからには水谷に関わるつもりだったけれど……加えてあの水瀬にそこまで言われちゃ、男として完璧にやらざるを得ないよな」
今回は僕、全然役に立たなかったけど、とばつの悪そうな顔をする阿良々木さん。
「ツンデレ……いただきました?」
「ああ、水瀬のツンデレはこの世の至宝だ。羨ましいぞ水谷」
「伊織さん……かわいい」
「最近、水瀬もわかってきたのか、僕がからかっても無視するようになったんだよな……」
哀しいことだ、と哀愁の空気を醸し出しながら自嘲する阿良々木さん。
本人がどういうつもりなのかわからないけれど、内容が内容なので全然かっこよくなかった。
阿良々木さんは、自分では何もしなかったとは言っているけれど。
アイドルがプロデューサーや事務所なしに活動出来ないように、世の中に本当に必要なのは、阿良々木さんのような間を取り持つ人だと、わたしは思う。
今回も、阿良々木さんがいなかったら、結末はきっと違っていた。
あ……そうだ。
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