過去ログ - 阿良々木暦「えりハーミット」
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8: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 20:46:44.23 ID:DLa1I0Qh0



003



恒久の現状維持という望みは、誰もが一度は願ったことがあると思う。

それが叶わない願いだなんて事は、とっくに理解している。
わたしだって子供じゃない。
時間だけはどんな障害も厭わずに流れ続ける。
そもそも時間に障害なんて概念はない。
時間だけは誰にでも平等。

でも、願うだけならば許されるはずだから。

わたしも今でこそスカウトされ、アイドルとなったけれど、元は部屋にこもって動画のアップを生き甲斐としていた極端なインドア派だ。
一人でいると、ネガティブな考えもたくさんする。
漠然とした未来への不安、この停滞に近い状況を何とかしないといけない、と心の何処かで思うものの、具体的に何をしたらいいのかはわからない。
いっそのこと死んでしまおうか、と思ったことも、正直言って一度だけじゃない。
でも死ぬことに値する理由もなければ、実行に移す勇気もない。
結局はだらだらと振れ幅の弱い日々を繰り返す。

生きることは、力がいる。
何もしなくても、あんなに辛い。
過酷に生きることは、過酷に死ぬよりも何倍も辛く大変なこと?

わたしがネットという電子の世界に傾倒しているのも、そんな理由があってのことなんだと思う。
ネットの世界は朽ちない。果てない。
世界中に点在し今も語り継がれる英雄や偉人と同じだ。
もし明日私が死んでも、私がいたという事実は動画やつぶやきとして半永久的に残る。
ネトアになったのも、ネットの住人として永久に生きていたい、と心の何処かで思っていたのかも。

不老不死や不死身の身体に興味はないけれど。

わたしがいた痕跡をどんな形であろうと残しておきたいと思うのは、傲慢なのかな。

「絵理ちゃん? どうしたの?」

気付くと涼さんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
いつも元気で前向きな涼さんも、わたしのように思い煩うこと、あるのかな。

「ううん……なんでも、ない」



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