過去ログ - 佐久間まゆ「ご結婚おめでとうございます、プロデューサーさん」
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12: ◆Freege5emM[saga]
2015/03/01(日) 23:20:39.30 ID:OA5hrQ14o
●11

私はこの言葉を口に出した時、平手打ちまでは覚悟していました。
アイドル失格の考えですね。

けれど私のお節介が心中でやかましく叫んで回るんです。
たとえアイドルが顔に傷をもらおうとも、これはハッキリさせないと後悔する、と。

まゆさんは顔をうつむかせていました。
私も下を見ると、まゆさんは正座した膝頭を覆うスカートに、両手の指を食い込ませていました。



二人ともそのままで、正座したままの足から感覚が薄れた頃、まゆさんの声が聞こえました。

『泰葉さん……今日まゆは、正直、こういう話になるかなって考えてたんですよ』
『……私、そんなに分かりやすいですか?』

まゆさんは顔をうつむかせたままでしたが、指から力が抜けたように見えました。

『泰葉さん、いつもお喋りはお茶屋さんなのに、今日に限って人目につかない寮室です。
 しかもドールハウスなんて同室の子が居てもできる話なのに、わざわざ人払いしてて』

こんな話は万一にも他人に聞かれてはいけない、と思って私は配慮したつもりでした。
それでここまであっさり意図を読まれると、自分が間抜け過ぎて不安になってきます。

『泰葉さんには、本当に感謝しているんです。
 まゆが、アイドルの顔をしていられたのは、あの時に泰葉さんが声をかけてくれたからです。
 だから、プロデューサーさんにも話せないようなことを、泰葉さんには話してしまうんです』



『まゆは……まゆを選んでくれたプロデューサーさんのために、もっともっと素敵なアイドルになって、
 プロデューサーさんを喜ばせるのが、まゆの幸せなんです……これ、泰葉さんへ言った覚えがありますね」
『私も、覚えてますよ』

まゆさんは顔を上げました。
濡れた瞳は雲のない夜空のように澄んでいて、ずっと見つめていたら、吸い込まれてしまいそうです。

『まゆはプロデューサーさんのアイドルとして、毎日ずっとキラキラした夢を見られるものだと思っていました。
 そういう運命だと思い込んでいました。そう思わずにはいられませんでした。
 歌詞みたいに、大好きだよって叫べたら、どれだけよかったか』

まゆさんが毎日見ていた夢は、もう終わってしまっています。

『泰葉さん……伝えられるわけがありません。伝えたら、プロデューサーさんを困らせてしまいます』



『だって、まゆのプロデューサーさんは女性ですから……』


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