5: ◆Freege5emM[saga]
2015/03/10(火) 23:36:18.86 ID:NvNrK1sjo
●04
プロデューサーとアイドルという立場では、俺は音葉をリードしている。
プロデューサーは、担当アイドルについての責任者であり、音葉もそれを理解している。
意見をぶつけあうことが合っても、基本的には俺を立ててくれる。
ただ、今のこのほとんど寝に帰るだけの殺風景な家では、俺と音葉の立場は逆転する。
背広も衣装も私服も脱ぎ捨てて、15cm以下の最近接距離で触れ合う瞬間、
音葉は俺から何かを聞き取り、すべてを読み取ってしまう。
「プロデューサーさんも、今日ずっと私の肌が恋しかったんですよね……?」
吐息の湿り気が届く間合いは、音葉に筒抜けの領域だ。
「朝、貴方に話しかけて、明日はオフだって言った時の息遣いなんか、露骨でしたよ。
聞いた瞬間、前にこうしてた夜のこと、思い出したんでしょう……」
日常会話の距離感でさえ、音葉はこの調子なのに、
心臓の鼓動まで伝わりそうなほど肌を合わせてしまえば、
俺は音葉への欲望をすべて引きずり出される。
「別れ際に、声を高くしたら……プロデューサーさんったら、嬌声を連想しましたね。
この間のオフからけっこう経ってますから、溜まってしまったんですか」
音葉の囁きが耳殻を掃いてくる。
アイドルの肌の柔らかさと、肌の下に息づく体温を押し付けられる。
雄の本能を煽ってくる感覚に、思わず溜息が出る。
俺の溜息を捉えた音葉は、してやったりと言わんばかりに笑った。
「……それとも、普段から私の声でそんなことを考えているのか。
それは、ちょっと困りますね……」
音葉があまりに確信めいて言い方をするせいで、
俺自身より音葉の方が俺の内心を分かってる気がしてしまう。
考えるより先に、音葉の言葉に頷いてしまいそうになる。
「いいですよ……私に触れても。その代わり……」
音葉から流し込まれる声音と体温に、脳味噌を蕩かされていく。
「私にも……貴方の音を感じさせてください」
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