過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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665:名無しNIPPER[saga]
2015/09/26(土) 21:39:12.72 ID:+2rknuSMO

咲「あれ……衣さん?」

衣「いきなり抜け出してどうしたのだ、と聞くのは野暮か」

 神妙な口調。意図するところはわかっている、と言いたげだ。衣の方を向いて困った顔を浮かべる咲に衣は続けた。

衣「さっきのイベントは中々に楽しかった。混ぜてくれてありがとう」

 話が変わっていた。若干固い表情を崩して話す彼女の深い色合いの瞳に咲はたじろぐ。

 先ほど行われたペットボトルの開封は特に深い事情はなく、度重なる振動で炭酸が危険な状態に陥ったペットボトルの処理を兼ねる遊びだった。

 智葉はケジメがどうとか落とし前がとか言っていたが、他の大半は面白がって見ていただけである。

咲「衣さんだけ別っていうのもなんですから」

衣「うむ、空谷足音」

 衣は嬉しそうに笑った。

衣「少しだけ、咲のいる臨海というチームがどういうところかわかった気がする」

 その言葉には好意的な意味合いが感じられて、咲も思わず相好を崩す。

咲「衣さんのいる龍門渕もすごくいいところですね。皆さんお元気ですか?」

衣「ああ。息災だ」

 それはよかった。彼女たちの姿は目にしていないが、そうでなければ衣は今ここにこうしていられないだろう。何かあればすぐに飛んでいくはずである。

衣「それで行き先はネリーとやらのところか?」

 また話が戻った。というより最初からその話に来たのだろう。歓談の場をわざわざ抜け出して、咲一人に礼を告げるというのも変な話だ。

咲「うん。ネリーちゃんの様子見に行こうと思って」

衣「ただの疲れだろう? 風邪でもない」

咲「でもネリーちゃんは留学生だから」

 留学生のネリーにとって大会中の体調は人一倍重い意味を持つ。厳しい目を向けられる立場にあるネリーへの心配は絶えない。

衣「そうか。そうだったな。心配もムリはないか」

衣「ーーひき止めて悪かった。確かめておきたかっただけだ」

 気にしないでください、と言おうとしたが衣は止める間もなく踵を返し、開いていた襖の中に駆けていく。

 断りを入れず部屋をあとにした咲が気になって追いかけてきたのだろう。といっても、広間では皆思い思いに過ごしているから、問題はない。

 静かに閉められた襖から目を離す。ネリーの部屋を目指し、咲は各人の部屋へと繋がる廊下を歩き始めた。




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