過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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883: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/12/15(火) 23:54:44.87 ID:Y8k0m8hzo
姉に勝つという目的に向かって邁進する……邁進しようとしている自分にとって、この行動は熱意を中途半端なものにする。

自分は本当に、中学で麻雀していた頃と違って、強くなるために全力を注いでいるか。

胸の奥から染みだした不安や迷いを振り払って、智葉に頭を下げる。慇懃に。

そして待たせていたネリーと合流して並んで練習室の中を歩いていく。

多くの視線を感じる。ネリーは言わずもがな、自分も注目されている。中学の三年のことが大きいのか、それとも初日からの智葉に真っ向から対抗しようとする姿勢のせいか、あるいは入部していきなり留学生と同等のような扱いを受けているからか、良くも悪くも関心が寄せられている気がした。

でも、それらは枝葉末節だ――――と言い聞かせる。

他人の注目、他人の好悪、それらは姉に勝つのに何ら関わりないことだ。間接的に影響するかもしれない程度。間接的な要因にまでいちいちかかずらっていたらきりがない。

だから、無視しなければ。無視しないといけない。

しかし、しかつめらしい考えをめぐらせればめぐらせるほど――、

「……サキ?」

思考が打ち切られる。歩いている途中、ネリーから呼びかけられる。

「え?」

「え、じゃないよ……顔色悪い。だいじょうぶなの」

足を止めて、咲の顔をのぞき込みながら心配げにネリーが言う。咲は平静をとり繕った。

「なんでもないよ。それより」

行く前に卓を囲んでいた人たちに謝らないといけない。智葉から許可を受けていくことが決まった以上、彼女たちには迷惑をかけることになる。

「それより?」

小首をかしげたネリーにそのことを告げて、一時、彼女の元を離れて同卓者に謝りにいく。他の二人は微妙な反応だったが、ハオは快く送り出してくれた。三人に等しく感謝する。

そうしてから、咲はもう一度ネリーと合流し、部室をあとにした。









警察への遺失物捜索願の手続きは滞りなく終わった。

近場の警察署に赴いたのだが、高校生の少女二人、とくにネリーは目鼻立ちはともかく服装が日本人離れしているので署内でも好奇の目を向けられることも多く、遺失物に関して手続きする際、担当に出てきた壮年の警察官も「あー、日本語は話しますか? Do you speak English?」と前に出たネリーに多少狼狽していた。

余談だが、この警官の『あなたは英語を話せますか?』という英語は正しい英文だ。和訳から考えるとつい『can』を使いたくなってしまうかもしれないが、『Can you speak English?』での『can』はこの場合『能力』の意味を指す。
そのため、人に対してこのように使うと『あなたには英語を話す能力があるか』という英文になり、場合によっては礼を欠いた表現となる。たとえば日本人に対して、母国語である日本語を話す能力があるかと訊くのは問題ないかもしれないが、一方で、外国人に日本語を話す能力があるかと訊くのは若干失礼だ。仕事で日本語を必要としない限り、話せなくても無理はないのだから。

だから、観光で日本に来ている外国人に対して日本語が話せるか、英語で尋ねるときは「can」ではなく「do」を使うのがベターだ。

閑話休題。ともあれ会話について日本語が堪能なネリーの直接の申し立てにより捜索願はつつがなく受理された。


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