過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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886: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/12/16(水) 00:02:24.81 ID:PozYXDL3o


未知との遭遇はいつだって緊張の連続だ。少なくとも、咲にとってはそう。

「よろしくしゃーす、捜索班のカズっていいます」

見るからに街の若者といった風体の少年が頭を下げてあいさつする。

頭を下げるといっても申し訳程度のもので、会釈といったほうがいいかもしれない。

繁華街の外れにある河川敷の広々とした敷地の中で、六人の男女が顔を突き合わせる。

その中にはネリーや咲もいて、咲からすれば都合四人が見も知らぬ人物となる。

「んじゃあ、大体紹介も終わったと思うんでぇー、次そっちいいすか?」

男子にしては長めの髪をオールバックにして、カチューシャで留めた青年が、こちらを向いて尋ねてくる。

金髪に染まった髪。シルバー系のアクセサリーをジャラジャラとつけて、いわゆるストリートスタイル。

カモ柄や迷彩柄のショーツやボトムス、マウンテンパーカー、中にはサングラスをかけたものがいたり、渋谷や原宿の街にいそうな顔ぶれだ。

そして、あまりに馴染みのない人たちを前にして咲は委縮して固まっている。

「……あのぉ〜?」

「……呼ばれてる」

「えっ……私、ですか?」

ネリーに促されて咲が戸惑いながらも声をあげると、どうしてか、ぐるりと円になって囲む青年たちから流暢な口笛や拍手が飛び出す。

「いいね〜初々しい感じ」

「なんかオジョウサマっぽい」

「俺らの付き合いだとあんま見ないタイプだよな」

言われている意味がいまいち頭に入ってこず、ますます混乱が深まっていく。

どうしよう、どうしたら、そんな言葉が先ほどから延々と頭の中で回っている。

そもそも、この人たちは何者なんだろう。そんなところから理解が追いついていない。

たしか……ネリーちゃんに連れられて、寄るところがあるって……それでこの河川敷にきたらこの人たちがいて……。

……意味がわからない!

「あの、この人たちは……?」

尋ねると、こちらを見返したネリーが難しい顔をして躊躇いがちに口を開く。

「えーと、お金で雇った失せもの探しバイトの人たち」

「バイト!」

咲が何か返すよりも早く、青年たちの一人が声を張った。

「バイトだってよ」

「はは、今まで知らなかったわ」

「まー言われてみればバイトだよな」

次々とやりとりが交わされ、さざめくような笑いが広がる。咲は目を白黒とさせながら、自分が今着ている――先ほどこの河川敷に来る前着替えたカジュアルな衣服の裾を意味もなく直したりして気をまぎらわせようとする。

お金で雇った失せもの探しバイト。それは、いったいどういうことなのだろう。表に出ていないが咲の混乱はかなりのものになっている。

「とりあえずさー、そっちの子、名前何?」

金髪をオールバックにした青年が軽い調子で尋ねてくる。

――これから会う人に本名、言わないで。ネリーを呼ぶときも偽名使って。

今は日本風のファッションに身を包み、いつもの日本人離れした特徴がいくらか和らいでいるネリーから、ここに来る前に繰り返し言われた言葉を思いだす。


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