過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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934: ◆JzBFpWM762[sage]
2016/01/03(日) 21:55:26.63 ID:JBG2pq10o
「でもサキ、ほんとによかったの?」

手を繋いでから暫し無言で歩いていると急に尋ねられる。咲は苦笑した。

「うん……時間は大丈夫だし」

同時に、心の中で失笑した。もちろん自分自身に。

咲は、夜間外出するネリーに同道している。咲が申し出た。

昨日の今日、というかついさっき悔やむようなことをしていたのに懲りていない。ほんとう……自分には脳みそじゃなくワラが詰まっている。

このときばかりは忸怩たる思いを禁じ得ず、しかし決して外面には出さずに表面上は微笑を湛える。

ネリーはそんな咲を何が意味があるでもなさそうに見つめて、「そっか」と片づけると前を向く。一連のやりとりの間も足は止めていない。押しては寄せる人の波をネリーの導きですいすいと泳ぐようにかわして街中を進んでいく。

渋谷。若者の街とも言われるだけあって、人込みを構成する通行人の年齢層は若めだ。もう八時はとうに過ぎているというのに、ネリーや咲と同年代らしき少年少女もそれなりにいた。時間帯もあるのか会社帰りのサラリーマンのようなスーツ姿の人もちらほら見受けられる。

「ねえ」とくに密集していた人込みを抜けたのを見はからって、咲は声をかけた。すると振り向かずに「うん?」とネリーが相づちを返す。

「いく場所って決まってる、んだよね?」

言葉に詰まったのは決まっていないことはないだろうな、と思ったから。ぶらぶらと街を練り歩くのも考えられなくはないが、あの電話からして、待ち合わせ場所のようなものは少なくともあるはずだ。

電話。はぐらかそうとするネリーと追及できない咲とで、気まずい沈黙が訪れそうだったとき。

割り込むようにかかってきたあの電話を図らずも受話器越しに又聞きしてしまって。

『あっ、エルティさーん! 今渋谷のアソコ向かってるんでぇ〜! 早めにお願いしますよぉ〜!』

めったやたらに上機嫌な大声が、ネリーが耳に当てた端末から筒抜けになった。

まさかと言わず聞き覚えのある声。あの特徴的な話し方は耳に残る。河川敷で対面した、あの金髪をオールバックにした青年の声に違いない。咲は聞いた瞬間確信した。

彼との通話を終えたネリーから後で聞いた話では酒に酔っていたらしい。「秘密保守っていったのに……あんな常識はずれな声だすなんて」と今にも舌打ちでも聞こえてきそうな苦々しい顔でつぶやいたネリーは、今思い出してもはらわたが煮えくり返ったのを何とか押し留めるようなあり様だった。

それから――、


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