過去ログ - 工藤忍「今日はいいてんき」
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13:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:03:16.91 ID:pbZE6X4vO

学校に通うようになれば友達もできるから、あとちょっとの辛抱だ、と自分に言い聞かせた。しかし、その一方で、友達ができなかったらどうしよう、という不安も消えない。

今にして思えば笑ってしまうような話だが、あの頃の私は真剣だった。
言葉を発しないまま一日を終え、布団にもぐりこむと、このまま私は一生誰とも口をきかないんだろうかという不安に襲われて、頭からすっぽり布団をかぶって、ラジオで聴いてそのまま耳に残っていた曲を、思い出すままいくつも歌った。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:04:22.46 ID:pbZE6X4vO

学校が始まる前日も、誰とも言葉を交わすことなく終わった。
昼間は適当な店を見て暇をつぶし、夕方になってアパートに戻った。

明日からは大丈夫だ。青森にいた時みたいに友達とわいわい賑やかにやれる。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:05:16.47 ID:pbZE6X4vO

父からだった。

元気ですか?
一人暮らしには慣れましたか?
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:06:15.74 ID:pbZE6X4vO

べつにたいしたことは話さなかった。早口になり過ぎないように、喋り過ぎないように「はがき、届いたから」「うん、学校は明日から」「ごはん?ちゃんと食べてるよ」なんて言って、父の話はほとんどきかずに話は終わった。

「うん、じゃあ」と言って、父が電話を切るのを待つ。ところが、父もなかなか電話を切らなかった。十秒ほどの沈黙があったあと、父の方から電話を切った。

以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:08:39.31 ID:pbZE6X4vO

部屋の明かりをつける。ティッシュで涙を拭き、鼻水をかんだ。

まだ友だちはいない。知り合いもいない。状況は何も変わっていない。
それでも、やっていけると思った。東京でがんばっていけると信じられた。
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:10:10.33 ID:pbZE6X4vO

木にもたれかかって、電話をかける。コールの音はあの時ほど長くは感じられなかったが、あの時と同じように耳に響く。

夫が出た。

以下略



19:名無しNIPPER[sage]
2015/03/17(火) 14:12:13.61 ID:6nj1ee4vo
16年経ってたら32歳じゃねと思ったけど時間差誕生日SSか

乙乙!


20:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:15:41.71 ID:pbZE6X4vO
ありがとうございました。ちょっと遅れちゃったけど、忍ちゃん誕生日おめでとう


21:名無しNIPPER[sage]
2015/03/17(火) 14:15:57.96 ID:frUSFtLEo
乙! 忍ちゃんらしい良いSSでござった。


22:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:19:45.32 ID:pbZE6X4vO
>>17訂正


『すごいじゃん。十六年たっても、まだ東京で頑張ってるなんて。でも、まだまだこっからだよ』

以下略



23:名無しNIPPER[sage]
2015/03/17(火) 21:42:45.03 ID:XOxbk61hO
乙乙
なんかこう、じわっと涙腺にきた


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