過去ログ - 櫻子「めぐみの雨と、恋で咲く花」
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19:名無しNIPPER[sage]
2015/03/30(月) 17:36:45.67 ID:JxUSEnW0o
みんなと遊ぶときでなくとも、撫子と付き合う中でよく来たものだ。ここは、私たちが二人きりになれる限られた貴重な空間だった。

付き合いだした当初は「うちは妹とかその友達がたくさんいるから、私がめぐみの家に行くよ」とあまり誘ってもらえなかったのだが、時間が経つにつれてだんだん寛容になり、次第に「私の家に来てほしい」とも言うようになっていった。


二人きりで過ごす時間は、外のそれとはまるで違う。撫子はここでしか見せない顔をたくさん持っていたし、それは私だけに許されているのだと思うと、心が満ち足りて仕方なかった。

普段関係を隠すように振る舞っているだけに、愛を確かめ合うときはより一層の反動があった。時間の比率で言えば「隠している私たち」の方が八割以上あったのに、それでもこの二割無い時間の方が「本当の私たち」なことに変わりはなかった。


言葉に表せずに溜まり続けた想いが、この許された空間では自然と滲み出てくる。互いが互いを求め合って、繋いだ手は次第に手ではない部位へ滑っていき、目を閉じれば、撫子は何も言わずにキスをくれた。

二人で、そういうことをしたことも、あったのだ。私の初めては、撫子だ。

大室家の玄関前に立つと無性に心がざわめくのは、その頃の名残だろう。もっとも今は、心をざわめかせるあの人がいないのだけれど。



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