173: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:07:12.52 ID:Z22ZBlJ80
ここまで話をした虎城に、京太郎はこういった。
「松 常久の息がかかったヤタガラスのサマナーに攻撃されたんですか? 子飼いのサマナーまでヤタガラス?
裏切り者が多すぎるでしょ、大丈夫なんですかヤタガラス?」
174: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:11:32.90 ID:Z22ZBlJ80
虎城が読心術を自分につかうというので、京太郎がきいた。
「それって、ピンポイントで情報を抜き出せるんですか。事件関係とかで検索するみたいなことは」
虎城の話を理解した京太郎は少し引いていた。なぜならば読心術をかけられたら、なにもかも明らかにされる。
175: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:15:15.40 ID:Z22ZBlJ80
スポーツカーの外でたぎっている怪しい女性と目を合わせると京太郎は笑った。そしてこういった。
「そっちから来てくれたか」
恐れはもちろんある。しかし怪しい女性を見て笑う京太郎は間違いなく楽しんでいた。京太郎は怪しい女性が現れてくれたことをありがたいと思っていた。
176: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:18:10.25 ID:Z22ZBlJ80
二人が固まって数秒後、虎城は小さく悲鳴を上げた。フロントガラスにかえるのようにへばりついている怪しい女性の姿を見たからである。そして怪しい女性の真っ赤な目が自分を見ていることに虎城は気がついてしまった。
真っ赤な二つの目をみたとき虎城は理解する。
「この悪魔は自分のことを心底、邪魔だと思っている」
177: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:21:18.39 ID:Z22ZBlJ80
怪しい女性がフロントガラスから離れると京太郎は助手席から降りた。そのとき京太郎はこういった。
「虎城さんはここでおとなしくしていてください。異変を察してディーさんが戻ってくるはずです。俺でもわかるくらい魔力を放っているのだから、気がついてくれるでしょう」
遺言のようにも聞こえた。事実、京太郎はここで終わることも覚悟していた。なぜならばこの怪しい女性と立ち会い、生きていられるのかは怪しい女性の心ひとつで決まるからだ。
178: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:26:51.97 ID:Z22ZBlJ80
しかし怪しい女性の抱擁を京太郎は避けた。一瞬の出来事である。虎城からは怪しい女性と京太郎が姿を消したと思ったら、まったく別の場所に立っていたようにしか見えていない。
いつのまにか京太郎はスポーツカーの前方三メートルほどのところに立っていて、いつの間にかスポーツカーの左斜め後ろ二メートルの位置に怪しい女性は移動していたのである。
すぐに京太郎の異変に虎城は気がついた。京太郎の体から血が流れ出ていた。服の上からもわかる。服の色が血液で変わり始めていたのだ。皮膚が裂け、服の下の京太郎の体が血でぬれはじめているのだ。また、鼻から血が流れ出ていた。
179: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:30:12.30 ID:Z22ZBlJ80
怪しい女性が三つに分かれたのをみて、京太郎は姿勢を整えた。かかとをわずかに上げて爪先立ちになりひざを軽く曲げて腰をわずかに落とした。
両腕をだらりとリラックスさせて、自由に動かせる状況にもっていく。いつでも最高速で動ける姿勢である。
すでに京太郎の頭の中に無駄なものはない。目の前の強敵に一泡吹かせてやるという闘志と、全身全霊でぶつかる喜びだけで動いている。
180: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:33:40.58 ID:Z22ZBlJ80
京太郎と怪しい女性のやり取りが始まって、あと少しで一秒が過ぎるというところ。怪しい女性は天と地がひっくり返る体験をした。視界が百八十度回転したのだ。そして怪しい女性は背中に大きな衝撃を受けた。
京太郎が飛び込んできてくれたと喜んだ次の瞬間、怪しい女性は自分の分身二体とぶつかってひっくり返っていたのだった。
怪しい女性は何がおきたのかがわからない。当然である。柔道の技、「肩車」からの「背負い投げ」を怪しい女性にかける人間など、今までいなかったからだ。
181: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:37:01.17 ID:Z22ZBlJ80
地面に伏せっている京太郎の姿は芋虫のように見えた。どうすることもできずにただもがくだけの哀れな虫けらである。しかし格上に一泡吹かせた虫けらだった。
これが暴走の代償である。身の程を知らずに上級悪魔の領域に足を踏み込んだものの末路である。本来なら手が届かない相手のステージに立つために無理をしたのだ。この程度で済んでいると見るほうがいいのかもしれない。
たとえ、死にかけているとしても、ましだったと思わなくてはならない。神経がしびれ、筋肉は千切れていても。毛細血管が裂けてだめになっていても。また無理に働かせたために領域ごとの仕事に混乱が起きている脳みそであってもましだったと思わなければならない。
182: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:41:15.28 ID:Z22ZBlJ80
何にしても怪しい女性の指先はあと少しのところで京太郎に届かなかった。
京太郎が稼いだ一分足らずの時間が、ディーに帰還を遂げさせたのである。京太郎の不思議に気を取られ、考え事をして、そして生まれた一分足らずの時間。京太郎の無茶は怪しい女性にほんの少しだけ時間の無駄づかいをさせた。
一分未満の時間でできることなどほとんどない。しかし音速のステージで戦うものたちにとって、一分未満は長すぎる。
183: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:45:12.90 ID:Z22ZBlJ80
そうこうしている間に京太郎の回復が完了した。虎城はずいぶん消耗していた。京太郎の肉体の損傷が、激しいものだったからだ。
しかし虎城は見事にやりきった。虎城も消耗していたのを考えると、ずいぶんがんばっていた。流れる汗がその証拠である。しかし彼女は満足げに微笑んでいた。
そして虎城は京太郎に声をかけた。
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