過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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184: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:49:10.19 ID:Z22ZBlJ80
 完全につながった京太郎は情報の奔流の中で、女性の正体に行き着いた。推理の必要はない。空から見下ろしているものが女性の本当の目であるとわかれば、その正体はすぐに明らかになる。

 京太郎の目につながってる怪しい女性の本当の眼球は、蒸気機関がつくる雲のはるか彼方にある。京太郎は、雲のはるか向こう側にあるものを知っている。空を占拠する、超巨大な光の塊。太陽ではない奇妙な光。これだ。これが怪しい女性の本当の眼球なのだ。

 ならば、その正体とは、たった一つである。オロチだ。怪しい女性とはつまりこの世界そのものなのだ。葦原の中つ国の塞の神と呼ばれている道の九十九神、この神が京太郎を狙っていた。
以下略



185: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:54:34.97 ID:Z22ZBlJ80
「修羅場は終わりだ」

 ディーが一息ついたところだった。京太郎を抱きしめていたオロチの触覚が京太郎から手を離した。そして立ち上がった。体が薄くなり消えかけてきた。しかしまだ輝く赤い目があきらめていなかった。

 奇妙な行動をとりはじめたオロチの触覚にディーが攻撃を仕掛けるよりも早く、オロチの触覚は京太郎に頭突きを行った。頭突きである。自分の額を京太郎の額に思い切りぶつけたのだ。ものすごく深くお辞儀をする格好で行われていた。
以下略



186: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:58:55.09 ID:Z22ZBlJ80

 ディーの胸の奥にあった失敗と後悔の感情は少しだけ薄まっている。無茶なことをやって死に掛けた京太郎が能天気な笑顔を浮かべているのを見て、ここで悩んでもしょうがないと頭を切り替えたのである。

場違いな笑顔が、頭を冷やすきっかけになったのだ。今は、悩むようなときではない。それを理解できたから、龍門渕へ帰るために動き出したのだった。

以下略



187: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:03:12.03 ID:Z22ZBlJ80
 男二人ががっくり落ち込んでいるところで、虎城が大きな声でこういった。

「さぁ、オロチの動きも落ち着いたことだし龍門渕に向かいましょう。ディーさんも須賀くんも元気出して。ね?」

 虎城はずいぶん無理をしていた。顔色が悪くなっていて、覇気がない。もともと虎城は無茶な逃亡手段をとって、体力も気力も消耗している状態だった。
以下略



188: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:07:42.24 ID:Z22ZBlJ80
来てくれるなと思ったところで現れた松常久の装甲車の群れ。そして道を変化させて松常久を誘導しているだろうオロチ。

現状を確認したディーがイラつきながらつぶやいた。

「さて、どうしてくれようか。もういっそオロチの本体ごとやっちまうか?」
以下略



189: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:12:46.58 ID:Z22ZBlJ80
 とんでもない勢いで魔力を集中させている京太郎を見てディーがとめた。

「いや、やめておいたほうがいい。

虎城さんがかぶってる帽子の発信機が壊れちまう。虎城さんの帽子を目印にしてハギちゃんは門を操っているはず。これが壊れるのはまずい。
以下略



190: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:17:58.07 ID:Z22ZBlJ80
 ディーの助言の後、少し間を空けてから京太郎は集中を始めた。銃撃をいったん切り上げて、助手席に上半身を引っ込めた。京太郎は体をひねり後ろを向いていた形だったので、元に戻ると目の前に虎城の顔が見えるようになる。京太郎の目に映る虎城は不安そうな顔だった。

 京太郎と虎城が見つめあう形になった。しかし京太郎は気にせずに、目を閉じた。そこから深呼吸を始めた。

 三回深呼吸を繰り返して、京太郎は目を開けた。スポーツをやっていたときに京太郎が身に着けた心を落ち着ける方法である。
以下略



191: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:21:57.02 ID:Z22ZBlJ80

 虎城がどうして目が戻ってしまったのかと考えているときに京太郎がぼそっとつぶやいた。

「マジですか。ものすごくものが見えたのに」

以下略



192: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:26:16.31 ID:Z22ZBlJ80
 冷や汗がひどいディーに京太郎はこういった。

「勝てそうにないんですか?」

 京太郎も少しだけ顔色が悪かった。京太郎よりもはるかに強いだろうディーにここまで冷や汗を流させるというのだから、京太郎は自分の死を予想した。今の京太郎なら目で追うことはできるけれども、同じ舞台で戦えないのだ。戦うといって無茶をしてもいいが、動けても一瞬だ。
以下略



193: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:29:48.11 ID:Z22ZBlJ80

 荷物を肩から下ろしたベンケイは今もため息を吐いている。面倒がまだまだ待っているからだ。

 もともと仕事で松常久の護衛をしていたのだ。松常久の護衛が終われば、会社に帰って書類を仕上げて帰れたはずだった。

以下略



194: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:37:53.51 ID:Z22ZBlJ80

そんなときだ。背後から追いかけてくる装甲車たちに追いつかれた。ついに、そのときが来たのだ。

 助手席の京太郎は装甲車を認めると、すぐにデリンジャーを構えた。集中力が高まると、京太郎の目が赤く輝き始めた。そして集中力が高まると同じくして京太郎の目から血涙が流れ出してきたのだった。

以下略



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