過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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20: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 05:08:31.82 ID:w4MVYybr0
 実に混沌とした光景を見てハギヨシの眉間に深いしわができた。完全に怒っていた。
 またほとんど同時に京太郎の眉間に深いしわが寄っていた。怒っていたわけではない。ハギヨシの怒りのオーラが炸裂することを思い、心を痛めたのである。

 ハギヨシが現れたことでやや騒がしくなったのだがそれも落ち着いて、金髪の長い髪の少女、龍門渕透華が京太郎に挨拶をした。

「まずは自己紹介から。

 はじめまして須賀京太郎さん。私は龍門渕透華、ヤタガラス龍門渕支部の使者をまかされています。

 そしてお礼を言わせてくださいませ。あなたが連れ戻してくれた龍門渕硯(すずり)は私の従姉弟。

 あなたの勇気がなければ私たちは一族の一人を失うところでしたわ。本当に、ありがとうございます」

 京太郎は御礼を受けてこう返した。

「いえ、俺は本当にたいしたことはしていませんから。俺の仲魔とライドウさんがいなかったらどうなっていたか。

 あと、須賀京太郎です。須賀でも京太郎でも呼びやすいように呼んでください。龍門渕さん」

 落ち着いているように見える京太郎であった。しかし内心驚いていた。先ほどまで床に寝転がってくつろいでいた少女と同じ人物だとは思えない変わり身だった。

 京太郎が応えてすぐのことだった。龍門渕透華がこういった。

「まぁ、謙虚なこと。しかし、パーティーは派手にやらせてもらいますわよ。もう聞いてますわよねパーティーについて」

 京太郎はうなずいた。

「はい、一応軽くは」

 京太郎がこたえると龍門渕透華はこういった。

「そうですか、それはよかったです。葛葉一族の行方不明者たちが見つかった祝いの席ということになっていますが、実際のところはあなたに報いるために開いているのですよ。わかりにくくていやですわ」

 京太郎が少し困った。何の話かさっぱりわからなかったのだ。

 そのときハギヨシが耳打ちをした。

「建前が邪魔をしているのですよ。

 そこそこ権力と力があるのに自分の家族を自力で取り戻せなかった人たちが多いですからね。

 ヤタガラスでもなければサマナーでもない一般人に先を越されて、悔しくてしょうがないのです。情報を規制して一応は十四代目が仕事をしたということになっていますが、情報は漏れるものでしょう?

 そもそも十四代目の仕事であれば情報規制する必要がないのに、規制をしているわけですから、少し考えればわかるでしょうね。

 まぁ、なににしても感謝はしている。これは間違いない。しかし、素直になれない。

 だから、建前と本音を分けて動いているわけです。このパーティーは無事に戻ってこれたことを普通に祝っている人たちと、須賀くんに会いたいと思っている人たちで分かれているわけです。

 私が車の中で話したことを覚えていますよね? あれですよ。

 龍門渕は運がよかったと思いますよ。あなたと接触できて直接交渉できるわけですから。十四代目が接触と情報を縛っていなければ、熊倉先生あたりは病室に乗り込んできていたでしょうね。

 いろいろと面倒なことになってはいますが、須賀くんが配慮する必要はありません。そういうものだと思って気にしないでください」

 京太郎は小さくうなずいた。大雑把にだが理解したのだ。京太郎は心の中でこんな風に受け取っていた。

「警察官が一般人に助けられて恥ずかしいみたいな話か?」

 京太郎とハギヨシがこそこそとしているところで龍門渕透華がこういった。

「準備期間が短かったので派手さにかけますが、取っておきのイベントを考えています。楽しみにしておいてくださいな京太郎さん。
 ねっ、ハギヨシ?」

 パーティーが始まるまで一時間ほど余裕があった。ということで天江衣の別館でゲームでもするかという話になった。天江衣がこういったのだ。

「リベンジだ! やられっぱなしでやめられるか! 京太郎の前でぼろぼろにしてやろう!」

 天江衣のリベンジ宣言に、アンヘルとソックがいやらしい笑みを浮かべた。そしてアンヘルがこういった。

「リベンジはいいですけど、良いんですか? 私たちは別に、麻雀でもかまいませんよ? 何ならトランプでも将棋でもチェスでも。

 機械任せのテレビゲームなら衣ちゃんも封殺できてしまいますからね、退屈してしまいますぅ」

 わかりやすい挑発だった。

 アンヘルの挑発に天江衣が答えた。

「侮るなよアンヘル。天江衣は成長するのだ!」

天江衣は実にいい顔をしていた。ジャージ姿でなければ、格好がついただろう。

 威勢のいいことを言いながら天江衣とアンヘルとソックがゲームの準備をしていると背の高いメイドさんが走りこんできた。ずいぶん急いだらしい、息が切れていた。



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