過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
1- 20
248: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:15:37.01 ID:py78Qnqv0
 京太郎の答えから少し間を空けてから、龍門渕透華はこういった。

「わかりました。ではヤタガラス龍門渕支部所属の正式なサマナーとしてあなたを迎え入れましょう。

あと、報酬はアンヘルさんとソックさんが使っている口座に振り込んでおけばいいですか? それとも別? 日本円以外での支払いでもいいですよ?」

 龍門渕透華は無表情を装っていたけれど口元が笑っていた。龍門渕透華も国広一と同じような考えなのだ。

 これから十年、二十年とヤタガラスの幹部としてヤタガラスの使者として働く気持ちが彼女にある。彼女はこれからこの地域のサマナーたちの元締めになるのだ。しかしそうなるためには力が必要だった。

 力というのはいろいろと種類がある。権力。財力。知力。支配者としてふさわしい度量。人の上に建つためにはいろいろな力が必要だ。ここではあがらなかったが、もっといろいろとあるかもしれない。

彼女は必要最低限は持っていた。権力も財力も知力も彼女は持っている。そういう環境と血統に生れ落ちた。

 ただ、もっとも大切なものを彼女は持っていなかった。暴力だ。彼女は暴力だけ持っていなかった。彼女自身も、彼女が見つけてきた数人の少女も、暴力だけは持っていなかった。そしてこの暴力だけは祖父も、父親も与えてくれなかった。

「次の龍門渕を名乗るのならば自分で見出さなければならない」

これは彼女の試練だった。

 龍門渕透華はやっとひとつ前に進めたと思ったのだ。これでやっとヤタガラスの使者として格好がつく。そして自分の祖父と父親に認められると。

 
 微笑を隠しながら龍門渕透華が報酬の話をすると、京太郎はこういった。

「そうっすね、よくわからないんでアンヘルとソックの口座でお願いします」

 本当に何がどうなっているのかわかっていなかった。とりあえず波風が立たないようにしてくれたらいいという気持ちが、表情に浮かんでいた。面倒くさい手続きだとか、印鑑を持ってくるとかいう話しにならなければいいなというのが京太郎の思うところである。

どのくらいの金額が振り込まれているのかだとか、ヤタガラスに入ることで受けられるメリットだとかは頭になかった。

 気の抜けた京太郎の答えのあと、龍門渕透華は京太郎に腕章を差し出した。腕章にはヤタガラスのエンブレムと同じ紋章と龍門渕の紋章が大きく刺繍されている。

 そしてこのように説明をした。

「わかりました。では同じ口座に振り込んでおきます。

 あと、これをあなたに渡しておきます。ヤタガラスと龍門渕の紋章が入った腕章です。いつも身に着けておいてください。

うらやましいことにあなたはずいぶん目立ちました。ですから、こうでもしておかないといけません。そうしないと悪いハイエナがよってきてしまいます」

 龍門渕透華が差し出した腕章は龍門渕所属のヤタガラスだという証明書のようなものだ。

彼女がすぐに腕章を差し出したのはどちらの報酬を選んだとしても渡すつもりだったからだ。この腕章は、スポーツ選手のユニフォームのようなものである。この腕章を見ればどこの所属なのかが一発でわかるようになっている。

 たいしたものではないかもしれない。実際、一般人が見てもただのおしゃれな腕章だ。しかしサマナーの関係者がこれを見ると、まったく違った印象を受ける。ヤタガラス龍門渕支部に所属していると一発で判断がつくのだ。

 一発で判断がつくということが、よその勢力のスカウト行為の障害になる。京太郎に話をつけるだけではだめになるのだ。、所属している龍門渕の許可が必要になる。スポーツ選手の移籍でもめるのと同じである。

 かなり豪華な腕章を京太郎は受け取った。龍門渕透華が腕章を差し出したとき、京太郎は数秒間動きを止めていた。何せずいぶん高級品のように見えたからだ。高級品だと一発でわかるような素材と刺繍の見事さである。

京太郎のお小遣い何年分になるのかもわからない。そんなものをいきなり手渡されたりすると、京太郎からするとおびえてしまうのだ。しかも、両手が血で少し汚れているので、余計に気を使ってしまう。

 何にしても京太郎は腕章を受け取った。そうすると国広一がうれしそうにこんなことを話した。

「須賀くんの教育係はハギヨシさんがしてくれると思うよ。いやぁ、退魔士系の新人が三人も入ってくれるなんてうれしいよ。

 あっそうだ、またお風呂に入らないとだめだよね須賀くん。ものすごく汚れちゃってるし服もぼろぼろ。すぐに用意するよ」

 国広一の口はよく回っていた。非常に機嫌がいいのがわかる。両手の指を絡ませて、何か不思議な動きをしていた。京太郎を引っ張りこめたことで龍門渕透華の問題が減ってうれしいのだ。

 何せ京太郎は魔人である。普通なら魔人というのはあまり好かれる人材ではない。松常久のように迷信を信じている人は多い。

 しかし、魔人という存在はほとんどの場合、非常に強い。暴力だけが足りていない龍門渕透華にとっては最高の人材だったのだ。そして、デジタル系サマナー全盛期の時代に退魔士系の新人が三人も追加される。国広一にしてみれば、龍門渕透華の進む道はとても明るく見えていた。

 国広一がニコニコしている間に、アンヘルとソックは天江衣を拉致して姿をくらました。ソックがハンドサインをアンヘルに送ったのだ。ハンドサインの内容は、天江衣を拉致して、自分についてくるようにだった。ハンドサインを受けたアンヘルは軽く微笑んでうなずいた。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
265Res/788.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice