過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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252: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:27:25.75 ID:py78Qnqv0

 京太郎は、自分の口を手で押さえていた。京太郎は青ざめている。

吐き気がまったくおさまらなかった。この吐き気は恐怖なのか。それとも生理的な嫌悪感のために生まれたものなのか、さっぱりわからない。

ただ、まったく言葉にできないけれども恐ろしいものが自分に降りかかってきたのだという実感が京太郎にあった。

 京太郎が、立ち尽くしていると声をかけられた。声をかけてきたのは宮永咲だった。彼女はこういった。

「京ちゃん? どうしたの」

どうやら京太郎の推理というのは正しかったらしい。京太郎が戻ろうとした道に宮永咲が立っていた。

ずいぶん不安そうな目で京太郎を見ていた。声も震えている。

 宮永咲に京太郎は答えた。

「あぁ、大丈夫。大丈夫だ」

 京太郎は少しだけ吐き気から逃れることができていた。顔色はかなり悪い。しかし、つい先ほどよりはましだった。宮永咲の声と、その存在が京太郎の心を少しだけ軽くしてくれたのだ。

 顔色の悪い京太郎は、宮永咲に近づいて、肩をポンとたたいた。そして宮永咲にこういった。

「みんなのところに戻るぞ。遅刻して敗退なんて笑えないぜ」

 京太郎は無理やりに笑って見せた。まだ顔色が悪いので無理をしているのはすぐにわかった。

京太郎もへたくそな笑顔だとは思っている。しかし必要だったのだ。そうすることで自分の元気を呼び込もうとしていた。

そして京太郎は宮永咲の前を歩き始めた。

 宮永咲は京太郎の横についてきた。

 宮永咲は京太郎の横顔じっと見つめていた。本当にじっと見つめているので何もない平坦な道でこけそうになっていた。

京太郎の横顔が見知らぬ人のように彼女には感じられたのだ。

 一週間か、二週間前の京太郎と今の京太郎を見比べてみれば、きっと別人のようだと誰もが思うだろう。

髪の色が変わっているということもある。しかしそれよりも雰囲気がずっと大人びていた。

 何かが京太郎に起きているのは明らかだった。そして先ほどの青ざめた顔も何かが起きた結果なのだろうと宮永咲は予想がついた。

 しかし問い詰めることはなかった。口を割らないとわかっていたからだ。だからせめて見つめるのだった。

 この灰色に何がおきようとしているのか知るために。
 




 「限りなく黒に近い灰色」 おしまい。



 



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