87: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:57:24.06 ID:KlUD8s2/0
怪我を回復している虎城を確認して京太郎は助手席に戻った。
そしてあっという間に窓から体を乗り出し、はるか上空を睨みつけた。助手席に戻るときに、スポーツカーの中にある不思議な空間に放り出されていたデリンジャーを拾っている。
京太郎が動き始めたのは、不思議な気配を感じたからである。なんとなく何かが来ているような気がする。そんな不思議な気持ちに従って、京太郎は動いたのだった。
急に真剣な表情に変わった京太郎を見た虎城が聞いた。
「どうしたの?」
さっぱり何がおきたのかわかっていなかった。虎城に感じられるのはスポーツカーのエンジンの音と、振動。そして土煙でぬるくなっているヘッドライトの光だけだ。
不安げに自分を見ていた京太郎が、一気に顔色を変えた理由がさっぱりわからなかった。いきなり真剣な顔になるのだ。不思議でしょうがなかった。
何がおきたのかわかっていない虎城に京太郎はこたえた。
「次のやつが来たみたいです。落としますね」
京太郎の目ははるか彼方の薄明かりから降りてくる悪魔たちの姿を捉えていた。京太郎はこの悪魔たちが松常久たちの手のものであると判断した。まったく関係のない悪魔かもしれない。しかし、漂ってくる雰囲気が妙に殺気立っているので丁寧に対応するのをやめた。
ディーと虎城の返事も待たず、躊躇なく京太郎は引き金を引いた。デリンジャーから発射された弾丸が暗闇に光のラインを引いた。
引き金を引いたあと、五秒ほどして羽の生えた悪魔が墜落してきた。ライオンのような頭の大きな鳥のような悪魔である。京太郎が引き金を引くたびに、残骸が増えた。
薄明かりから飛び出してくる悪魔たちは狙いやすい的だったのだ。そして、弾丸を気にせずに引き金を引くので結構な割合で悪魔たちを落とすことができていた。
積みあがる残骸を見てディーが笑った。
「お見事。すぐにでもヤタガラスの構成員になれるな」
土煙が収まる間での間、次々と現れる悪魔たちを京太郎は打ち落としていた。松常久の送り込んでくる悪魔たちは数が多く、いつになっても途切れるということがなかった。
しかしそれでも京太郎ははるか上空の薄明かりをにらみ続けていた。まったく引き金を引く手は力を失わない。ここで完全に足止めを食らえば、大量の悪魔と持久戦を始めなくてはならなくなるのだ。京太郎も暗闇で持久戦をするのは避けたかった。
はるか彼方の光を見つめている京太郎に虎城が聞いた。
「あの、聞き間違いですかね? 須賀くんがヤタガラスの構成員ではない?」
虎城が質問をしたのは、あまりにもありえないだろうと思ったからなのだ。虎城は京太郎のことをヤタガラスの構成員だと思っていた。なぜなら龍門渕のロゴが入ったジャンパーを着て、帽子をかぶっていたから。そして構成員だろうと思える武力を見せていたから。しかしもしもそうでないというのなら、これはおかしなことだ。
光を睨みながら京太郎は答えた。京太郎はまだ、はるか上空から襲い掛かってくる悪魔たちを捕らえて、打ち落とし続けていた。
「ヤタガラスではないですよ。用事があったのでヤタガラスの帽子とジャンパーを借りているだけです。俺はただの高校生です」
嘘ではない。この異界に入るために必要だったのでヤタガラスの格好をしているだけである。京太郎はただの、高校生だ。
落下から三分ほどすると、土煙が収まった。そうするとアクセルをディーは踏み始めた。ヘッドライトが真っ暗闇を上手く照らし始めたのだ。そろそろ車を動かしても大丈夫そうだった。
車が動き始めたところで、京太郎は姿勢を戻した。真っ暗闇の中をスポーツカーは進んでいくのだ。何があるかもわからないところで、体を車の外に出しておくのは、京太郎も怖かった。
動き出した車の中で虎城がこういった。京太郎の答えを聞いて少し間が空いていた。
「えっ? でも、あれ? 異能力者はスカウトされるはず」
ヤタガラスが人材を積極的に取り込んでいることを彼女は知っている。そのため京太郎のようなタイプは発見されしだい声をかけられると知っていた。
仮にヤタガラスに入らなかったとしても監視対象になるのが常だ。京太郎のように、自由な立場にいるということはまずありえない。彼女はそれが不思議だった。
京太郎が答える前に、車は急加速した。暗闇の中を車はどんどん進んでいった。暗闇を進む巣車の後を悪魔たちが追いかけてくるが、あっという間に引き離してしまった。それから、追いついてくるものはいなかった。悪魔たちには暗闇を照らす光がなかったのだ。
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