88: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:00:32.90 ID:KlUD8s2/0
暗闇の中を車は進んでいった。ヘッドライトが進行方向を照らしてはいた。しかし光が届かない部分が多すぎた。太陽の光が奈落の底まで届かないのだ。ランタンのひとつでもたっていればいいが、そういう類のものもない。完全に真っ暗闇。頼れるのはヘッドライトだけだった。
運転手のディーは困ったようにこういった。
「どうしたもんか。まさかここまで落とされるとは思わなかった。道がまったくわからねぇ。マジでいつの時代の道なんだ? タイムスリップした気分だ」
ディーは何とか車を運転していた。幸いといえばいいのか、障害物になるようなものはまったくない。しかし、あまり喜べなかった。運転席から見える光景から自分たちがどれだけ深いところに落ちてきたのか予想できなかったからだ。
オロチという道の九十九神は日本が出来上がってからいままでのすべての道を所有している。そのため、どの時代の道を走っているのかは大体予想がつく。最近の時代ならアスファルト、数十年前の石畳のような道。昔の時代なら踏み固められた道になってくる。
道自体か、道の周りに手がかりになるものがあるのだ。その時代の建物だとか、標識が手がかりになる。しかしここには何もない。光さえ届かないほど深い時代の道。手がかりも目印もなければ、上に登ることさえできないのだ。追っ手から逃げ切ることができてもこのオロチから逃れ切れなければ、意味がない。
帰れなくなるのは困る。
真っ暗闇の中を十分ほどスポーツカーは走った。松 常久の悪魔の軍勢は一匹も追いついてこなかった。完全に巻いたのだ。
しかしディーもどこへ行けばいいのかわからなくなっていた。完全に迷ったようだった。
しょうがない話だ。何の目印もなく、光もない。障害物のひとつでもあればいいのに、何もない。ただ走るだけなのだ。硬い地面があるだけで、目印のない砂漠を走るのと変わらない。
地図も持たずに走り出せば迷うのは当然だった。それは松常久の軍勢も、ディーも同じことだった。
さてどうしたものかと困りながらもスポーツカーは先に進んでいった。止まっていたところでどうにかなるわけではないからだ。動き回って上に戻っていかなくてはならない。
たとえ、無駄に思えてもやらなければ、先には進めないのだ。
それから更に十分ほど闇雲にスポーツカーを進めていった。そうすると、ディーがこういった。
「おっ! ラッキーだ。オロチの石碑がある」
ディーはとんでもない喜びようだった。砂漠でオアシスを見つけた遭難者のように喜んだ。ディーが見つけたオロチの石碑というのは京太郎がサービスエリアで見つけたもの、そして異界物流センターで見つけたものと同じものである。
ディーはこの石碑がとんでもなく便利なものであるというのを知っていた。だからディーは喜んだのだ。こいつがあれば脱出の糸口になると知っているのだ。
はしゃぎはじめたディーを見て京太郎が質問をした。
「オロチの石碑ってのが見つかったとして、何かあるんですか?」
悪魔たちの追撃がなかったために京太郎にできることといえば、黙ってディーに任せるくらいのものだった。
変化といえば
「帽子はかぶっておいたほうがいいわよ。発信機がついているから、いざというときに目印になる。
一般人の須賀くんがかぶっていたほうがいいわ。私よりもずっと強いからいらないかもしれないけど」
と不思議な空間に放り出していた帽子を虎城にかぶらされるくらいのものだった。何か、退屈を紛らわせてくれるきっかけがあるのなら、飛びつきたい心境だった。それがたとえ、小さな疑問であっても。
暇をしていた京太郎の質問にディーが答えた。
「この石碑は道に迷ったものを助けてくれるのさ。もちろんただじゃないけどね。
道案内のための掲示板があるだろ? あれと同じような仕掛けがオロチの世界にはいたるところにあるのさ。これもそのひとつ。
まぁ最近はヤタガラスが地図を作って利用者に配っているから使う人は少ないけど、いざというときにはこいつを使えばどうにかなる」
京太郎に説明をするディーはずいぶんほっとしていた。どのように進めばいいのかがわかりさえすれば、後はどうにでもできるからだ。
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