過去ログ - 唯「10年後の桜高卒業式」
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14: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/03/31(火) 06:35:34.42 ID:zAK3ZPJb0
 そして、最後の曲が始まる−−唯と梓はアコースティックギターに、澪はウッドベースにそれぞれ持ち替え、
むぎ様はストリングスの音色を確かめ、りっちゃんはスティックをブラシに持ち替えて始まったのは−−
「いちばんいっぱい」

 わたしは、もうイントロの瞬間から堪らなくなって、涙が止まらなくなっていた。
 唯の言葉が、5人の響かせる音色が、全身に染み渡っていく。

 おはよう、ぴかぴか朝陽
 全身に金色スポットライト

 何者にもなれないかもしれない、どうやって生きていけばいいのかわからない、
わたしの漠然とした不安を解すように、溶かすように。

 こころ何センチ? どんなカタチしてるの?
 わかんない でも“大好き”が触れる場所

 唯のボーカルを追いかけながら、包み込むように、まるで何気ない会話みたいに、寄り添う4人のコーラス。

 だから 一番を探しに出逢いに行こうよ
 学校・音・歌・お茶・お菓子
 百個目の一番も それは一番で
 胸いっぱい お腹一杯
 充たされて 一緒にね…にっこり

 中学3年の夏に出逢ったわたしの初めての「いちばん」が、
優しく語りかける、笑顔が湧き上がる声が、身体中に響く。

 一番はひとつじゃない

 わたしは、わたしを。
 拙くて、平凡でもわたしを生きよう。
 そう、思えた。

 全ての演奏が終わって、鳴り止まない拍手に講堂全体が包まれると、
彼女たちは、その場でメンバー同士のアイコンタクトした。
 全員が頷くと唯は再びマイクの前に立つ。
 いたずらな笑顔で、また新しい「いちばん」を見つけたかのように。

「ねぇ、みんな。もう一曲やってもいい?」

 その声に、わたしたちは再び大歓声を上げ、隅の方で見守る
山中先生はやれやれとまた肩を落とし、一曲限りのアンコール−−。

 「ふわふわ時間」が、始まった−−。


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