8: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/03/31(火) 06:18:46.87 ID:zAK3ZPJb0
「それでは、これより第95回桜が丘女子高等学校卒業式を執り行います」
卒業式はつつがなく進行した。
実行委員会が選んだBGMが流れる中証書の授与が行われ(U&Iのオルゴールアレンジが流れている時に
わたしの名が呼ばれたのは、もしかしたら運命かもしれない)、
名前も知らないここの卒業生であるらしい政治家や、著名人からの祝電が読み上げられる。
それが終わると、校長先生の祝辞、在校生代表の送辞、卒業生代表の答辞。
何もかもが他人事みたいに通り過ぎていく。もう二度とやってこないのに。
わたしは今この場の感慨より、未来への不安、漠然とした前途多難を想像していた。
わたしはわたしをどうやって生きていけばいいのだろう。
わたしはどうなってしまうのだろう。
そんなことを、考えて。
ぼんやり見つめた舞台には−−やっぱり幕が下りていた。
そうしているうちに、当たり障りのない−−と言ったら失礼だけれど、
よく出来た答辞を卒業生代表が読み終えて一礼すると、
司会の山中先生(HTT結成の頃から軽音部の顧問で、バンドの名付け親で、実はハードロッカーで、
わたしの憧れの先生で、妙齢の魔女)が引き続き式を進行するためにマイクへ向かう。
残すは校歌の斉唱だけ。それを終えたら全員で礼をして、
卒業生の私たちは在校生や保護者の拍手の中をここから退場する。
講堂全体にはすすり泣く声がたくさんあふれている。みんなみんな、今がかなしいんだ。
確かに、何かが終わってしまう感慨ってのは、それ自体、決して悪くはないのだけれど。
わたしはあんまり、そんな気にはなれなかった。
今よりも未来への恐怖に震えるし、何よりも、悲しいのはあまり好きじゃない。
だって、悲しいのはかなしいじゃないか。
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