3:名無しNIPPER[sage]
2015/03/31(火) 17:13:42.84 ID:5f1jLFQY0
  
  
 「……」 
  
  
 私は彼の視線を逸らし、再び海を見つめる。 
 あの戦いの終結から既に24年の月日が過ぎた。 
  
 『奇跡の駆逐艦』と言われた私も、他の先輩方に比べ随分長生きしたものだ。 
 その最後が、台風の影響で体を大破させるという自然災害とは。 
 天からの災には贖うことはできないと判ってはいるものの、せめて皆と同じように戦いの海で沈みたかった。 
 これで私が奇跡と語り継がれるくらいなのだから、自分の最後に辱めを覚えるのは普通の感情であろう。 
  
  
  
 「故郷に、帰りたいかい?」 
  
  
 ふと、指揮官が私に尋ねる。 
 故郷に……帰る。 
 それは願ってもないことだが、既に志を共にした仲間も司令もいない故郷に帰って何が残るというのだ。 
 私は兵器。戦うことが務め。 
 その能力が無くなれば、不必要と判断され、存在することは必要ではなくなるのだ。 
  
  
 ……それは、誰よりも他の仲間の死を見てきた私は、誰よりも理解している。 
 それに 
  
  
 「……この海で散るのであれば、皆に会えるから」 
  
  
 「!」 
  
  
 「あはは……そう言いたそうな顔をしてるね」 
  
  
 「……」 
  
  
 さすが、10年以上私の指揮を取った指揮官。 
 心の中はお見通しという訳か。 
 ……最初は「誰がお前の言うことなんか聞くものか」と思っていたのに。 
 強がっていた幼い頃が懐かしい。 
  
  
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