過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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402: ◆R/5y8AboOk[sage saga]
2015/08/14(金) 03:47:52.04 ID:+FUAmXwk0
 ――――と、瞬間カースと戦闘機械を結びつけた頭に『コプテッドビークル』との言葉が浮かび上がり、ぞっとしない感覚が背筋を駆け抜けた。

 コプテッドビークル。憤怒の街攻略の折、多くの戦闘兵器が乗り捨てられたことにが原因で発見されたカースの習性。
 そのコックピットの中に入り込み、何処から学習したのかその兵器を扱って見せる―――。

 もしあれが今動き出せば、我々歩兵部隊はどうなる?あの装甲と火力にヒーローはどこまで通用する?周辺の被害は…

 危機を感じる体が多機能ヘルメットに内蔵型CSGの起動を促し、ヴンと鈍い起動音が耳を擽ったかと思えば、動き始めたセンサーの捉える反応が多機能バイザー部にポイントマーカーとして投影された。
 先ずは野望の鎧の心臓部。事前の観測によりその存在を認知されていた、動力源替わりにされた巨大なカース核の反応。
 それに混じって少し下、遠方故か淡い点で主張するマーカーの揺らめき───制御された鎧の核とは違い、明らかに不自然な挙動で揺れる光の点、カースと見て違いはないであろう反応───。

「…でかしたぞ少尉」

 動乱に潜んで近付いていた小さな驚異を認め、血の気が引くと、短く労った声には微かな震えが混じった。

「セーフリーダーから本部、野望の鎧の足元にカースを確認した、乗っ取られる前に排除する…!」

 乱暴に起動した無線機に言うと、返事を待たずに場に目を張り巡らせれば、都合良く開いた脱出口と思しき戸を見つけることが出来た。
 吸血鬼共が脱出した後か、開きっぱなしの先は甲板に降りることが出来るようになっているようだ。
 今更罠を疑うこともあるまい。そう唱えて心を決めれば、万能ワイヤーで甲板に降りる動作に迷いはなかった。

 甲板に放置された二脚の巨人。その足下の陰にある反応をセンサーは逃していない。
 先ずは炙り出す。心の中で唱え、手榴弾のピンを噛んで引き抜くと「出てこい!」叫び、放物線を描いて転がった手榴弾が間を置いて炸裂。撒き散らされた鉄片を逃れた虎型のカースが影から飛び出し、その胴体にカースの反応を示すポイントマーカーを灯しながら、そのまま隊長に踊り掛かった。
 牽制のサブマシンガンが曳光弾の尾を引いて殺到し、一瞬早く直進軌道を逸らせた虎の輪郭を照らす。
 即座に敵の起動を追従する射撃の全てを躱しきることはできなかったが、しかし、虎のカースはジグザグの起動を描いて射線を振り、致命傷を避けて数秒かからずのうちに距離を詰める。

 核さえ生きていれば構わぬが故か、まともな知性を持たぬが故の猪突猛進か。
 迷いのない突進というのは中々に厄介であると、白熱する意識の中で再確認する。

呪いの声で虎が叫び、ズタズタの体を振り乱して爪を振り上げ飛び掛かる。このまま弾丸を撃ち掛けたとて、こちらに危害が加わる前にその体を止められるという保証は無かった。鈍い光を放つ大型ナイフ抜き放ち、正面から相対する。
 ぬめる泥でできた恐ろしき爪。筋肉を模した機関が脈動し、ぐんと加速した前腕が振り下ろされると同時、断ちきる思いで振り切られたナイフが交錯すると、泥と火花が飛び散った。

「───単調な獣が……!」
『GHUUU…』

 半ばをすっぱりと切断され、明後日の方向に吹き飛ぶ凶爪。バランスを崩した虎の胴体が宙に舞うまま彼の側面に横腹を晒せば、返す刃がその腹を一直線に切り裂いた。
 血飛沫の代わりに飛び散る泥が、鈍色のナイフと武骨なアーマスーツにこびり付く。受け身をとるべき体制をまんまと崩され、虎のカース半ばもんどり打つようにして地面に落ちる。

 生存本能という物を持たず、歪な衝動を行動原理とするカースは、例え窮地に陥ろうとも戦意を失うことはない。瞳には依然変わらぬ緑色の光が宿り、全身を使って跳ね起きた虎が牙を剥く。性質として不定形の泥は虎の戦意に反応してより長く変形し、より凶悪な表情を表したが、大きな隙を晒した者にとっては威嚇ほどの意味を持たぬ行為だった。

 隊長の構える銃口が冷徹な色を反射するも一瞬、マズルフラッシュと共に吐き出される無数の弾丸が三足の不安定な姿勢を容赦なく切り崩し、反撃をただの身動ぎに変え、苦し紛れの抵抗も許さない。
 そのまま叩きつけられる弾丸はやがてその心臓に収束し、そのままに核を貫く。
 泥の塊から核の反応が分裂し、不快な粒子となって散る呪いの残滓が、一瞬だけ色付いた霧のようになってから虚空に霧散した。



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