過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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◆R/5y8AboOk
[sage saga]
2015/08/14(金) 04:06:35.52 ID:+FUAmXwk0
「───目、閉じたらダメじゃない」
不意、ぞっとするほど冷たい声音が背中に吐き付けられ、肝を冷やした。背後。気付いたときには遅く、ぬっと影を落とす気配が神経を伝うも一瞬、空気の全て抜けるような衝撃がヒカルの背中を貫き、はっとする思考をも粉砕された。頭ごと揺さぶるような衝撃に意識を手放しそうになり、次いで前方から体重が跳ね返ってくるような衝撃に意識を覚醒させる。
どうなった?叩き落とされた。違いない。どうやって?敵はどうして飛行できた?否、跳躍?───。
このままではいけないと叫ぶ意識が全身を動かそう試みるが、瞬間的に機能不全を起こした運動機能はそれに応えなかった。代わりに、首もとに不吉な圧迫感があったかと思えば、動けないこの身をあざ笑うかのようにぐっと持ち上げられた。
「クソッ…がはッ……なんの、為に…!」
それでも、なんとか絞り出して吐いた言葉は、苦し紛れのモノだったと言って違いない。留美はあくまでも平坦な態度を崩さず、言う。
「ビジネスよ」
「…何ッ…!?」
「ビジネス。…子供でも言葉くらい知ってるでしょう?カネになることをしにきたのよ、私は」
さも当然。とでも言いたげな口調が背中を伝い、もがく自分の虚しさが対比されるように感じられ、ひとりでな気力だけがいっそう空回りするようだった。
ふざけるな。子供扱いして。ビジネスだと?そんなことで人に迷惑をかけていいとでも───。
怒りのような感情に任せ、苦しげな怒声を絞り出そうとすると、急にぐっと揺さぶられて果たせなかった。代わりに呻き声を出され、別の方向へ体を向けさせられた光は「だから」と重ねられる声を聞く。
「正義の味方だったかしら。悪事をしに来たわけじゃないから邪魔しないで頂戴」
「…そうね、お誂え向きはあっち。よく見なさい」
早く。とでも言いたげに、体がまた一つ揺さぶられた。
ぼんやりした視界の先にあるのは、吸血鬼が乗ってきた戦艦と、そそり立つ二体の巨人、それと───。
「ほら?あそこに真っ黒い人影が見えるでしょ?」
「あれこそ悪魔よ、余計な人質を取って人を困らせてるんだから、…それにあの子は───」
「それ、は…お前も…!」
「…わかったら、私の事は見逃して欲しいわね」
お前も。言い掛けた言葉を強引に遮ると、留美は無造作にヒカルの体を放り落とした。受け身も満足に取れずに落下したが、先とは比べようもない。
ようやく動き始める体を奮わせ、震える腕を杖にして上体を起こす。まだだ。屈するわけにはいかない。正義は絶対に───。
『ヒカル。もう居ないよ』
「えっ…」
少しの間聞こえなくなっていた声が耳朶を打ち、はっと冷静になった光は空白の思いで背後を振り向いた。
もう居ない。
十数秒も無い時間だった。
能力者の身体能力で駆け出したか、なにか面妖な手段でも使ったか。
『ボクもダメージを負ってしまって…ごめんよ、助けられなかった』
「いや、アタシが不甲斐なかったんだ…」
『じゃあお互い様だ…次こういう事が起こってはいけない。もっと正義の力を引き出せるようにならなきゃ』
そうだ。───と、返そうとして喉を震わせたが、それはどうしてだか言葉にならなかった。行き場をなくして腐り落ちた体の熱。ぼんやりとした気持ちに駆られた光は当て所ない瞳を泳がせ、その終わりにブラムの巨影を眺めた。
黒い巨人が赤の巨人の体を引き裂き、邪魔な四肢を放り捨てて、胸像になった巨人の胴体を抱き込むと、途端に溢れ出した漆黒の瘴気にお互いを包み込み、影に溶け込んで消えていく───冒涜的ですらある光景が繰り広げられている。
その中、全身を漆黒の鎧で包み、悪魔めいた翼を広げる人影を認めた光は、お誂え向きはあっち、と言った声の残響を脳裏に呼び起こした。
どこかへ消えた女の代わりにそのシルエットを目に焼き付ける行為は、せめてもの抵抗でもあり、屈辱のそれでもあり────。
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