過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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411: ◆R/5y8AboOk[sage saga]
2015/08/14(金) 04:07:42.01 ID:+FUAmXwk0


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 全体がサイバースペースを内包する無機質なメガロシティは、闇が迫るごとに化粧を濃くしていく。

 丑三つ時を回る今となっても黄金の夜景は衰える事を知らず、時には光の血流を形作りながら、常闇の下に四角い町並みを浮き彫りにしていた。
 その一角、猥雑なネオンの濁流は昼の抑圧を晴らすかのように踊り、誘灯蛾めいて惹かれてくるサラリマンの悲喜こもごもを呑み込んではいっそう派手になるとわかる。
 「大特価」「家族サービス」「実際高級」…はるか上空、或いはビルの壁面、或いは店前の呼子。垂れ幕や音声で押し付けがましく主張する広告の類は、日々に疲れた者達から小さな夢の対価を引き出そうと必死だ。そして、それらは口々に主張し合う雑踏、喧噪、クラクションやエンジンの声とミックスされて、眠りを遠ざける騒音の波を形成している。日々のしがらみを忘れようともがく、閉塞的な者達の悲壮なミュージックを思わせて。

 雑音を小さく切りながら疾駆するサイレンが追うのは、下手を踏んだ闇取引の現場か、ドロップアウト達の暴力沙汰か。―――それはきっと、バルーンの下腹にニュースとCMを交互に映しつつ、喧騒を逃れて遊飛行する小型ツェッペリンが明日教えてくれるだろう。


 ここは経済特区ネオトーキョー。
 金と欲望と打算と闇を、無機質な仮面と華々しい光で覆い隠す、日本経済の先端地。

 夜景を指して幻想的。最先端のオブジェクトを指して近未来的。
 この景色を形容する言葉はいくらでもあったが、いずれにも共通しているのは外の人間の評価だということだった。この町に住まい、社会の歯車とその身を捧げ、夜景の光一粒の持つ意味を知った者達は、そういった煌びやかな印象を忘れる。

 その光は命の輝き。その形は意志の造形。
 今日もまたどこかで光が消え、今日もまたどこかでオブジェクトが建つ。
 日が堕ち、純粋に街の色のみを映し出した景色に思いを馳せてみれば、過ぎる尽くは感傷的な感情だった。

 ───だが。
 もし、そうでない物を感じることのできる人種を挙げるとしたら、それはセンチメンタルを愉悦と余裕で塗り潰すことのできる、勝ち組と呼ばれる者達に違いない。この街の景色を酒の肴にできるものなどは、それこそ―――。


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