過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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491: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2015/12/08(火) 00:37:36.04 ID:OBJgOl+No

『―――、その子犬を殺せ』

 言って聞かない子供には、こうした手段が手っ取り早い。
 特に、兵士として百人殺せる人間になれと説くよりも、たった一つ『殺す』と言うことを経験させる方がこの場合では手早く、効果的なのだ。

『拒否は許さない』

 男は有無を言わさない。
 そうであろう。そしてそれでも拒否をすれば、私はきっとひどい目にあわされる。
 下手をすれば、これが最終通告なのかもしれない。
 私はこの子犬を殺さぬ限り、きっと最低限の人間的な暮らしでさえ剥奪されてしまう。

 だが私は男の言うことは聞かなかった。
 誰かを傷つけることなんてしたくない。それをするくらいなら死んだ方がましだという覚悟さえ幼い私ながらこの時持っていたのだ。
 この子犬を自分で殺すことは、それこそ自己の否定。死よりも恐ろしい自殺だ。

 この小さな個室の入口の扉の前から、男は私たちを見下ろしている。
 その瞳は影になっていて何を映しているのかわからない。
 だからこそ私は、決して屈しないという幼稚ながらも硬い意志と、腕に抱く子犬を守りきるという使命だけを抱いて男を睨み返した。

『そうか』



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