過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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◆PupFZ5BZvyzZ
[sage saga]
2016/02/03(水) 22:48:39.54 ID:12lMyB4a0
#3
暗黒経済都市ネオトーキョー。煌びやかで喧しいメインストリートから一歩脇道に逸れれば、そこは闇と湿度と静寂が支配する裏通りだ。
ヒノワ・ストリートもそうした退廃通りの一つで、軽自動車が辛うじてすれ違える程度に狭い道を挟んでシャッター閉鎖店舗が並ぶ。
歪にへしゃげたシャッターと枠だけになったショーウィンドウをくぐり、死にかけた街灯の点滅は夜逃げ廃墟と化した家具屋の展示フロアに届いていた。
「キングサイズ」「セール対象外」のラベルが貼られた高級ベッドに腰掛け、ライオン王族の王子シャキョウは尊大な態度を崩さない。
「貴公と郎党のおかげで、王家は……いや、獣人界は、最悪の事態を迎えずに済んだ。その功に報いて、何か褒美をとらせようと思うのだ」
「滅相もございません。数多の同胞が危機に晒されているとあっては、知らぬフリなど私にはできなかった。それだけのことです」
同胞。然り、アサミ=ロイを名乗るこの初老の男も獣人であり、郎党たるサル獣人達を率いて王子と接触したのは昨年の暮れのことであった。
白髪白ヒゲのアサミ=ロイは、王子の御前に跪き頭を下げている。敬意と自尊心を併せ持つ凛々しい姿は、気高き王子の気分をとても良くした。
「貴公のごとき知恵者こそ、獣人界には必要なのだ。国賊どもに知性があれば、此度の戦乱を招かずに済んだ。獣人界も、我々自身も変わらねばなるまいな」
王子はアサミ=ロイの背後を見やった。サル獣人達が慌ただしく行き交い、ヘビ獣人ヤミヅチの太く長い死骸を運びやすく分割する作業に汗を流す。
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