過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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776: ◆OJ5hxfM1Hu2U[sage saga]
2016/02/10(水) 16:47:26.34 ID:WON0jd3s0

 ビボッ。傭兵の端末が鳴った。任務完了報告を終え、報酬を受け取ったのだろう。もはや兄と傭兵の間に雇用関係は成り立たない。

「センセイ、お願いします!」

 ロータスクードの土下座にアイは主導権を握られることとなった。たしなめようと屈み込んだアイに、七本足のイカはまくし立てた。

「そもそも! 俺がこんな金持ちになれたのも、稼ぎをひたすら高性能サイバネに注ぎ込んで、強くなる努力をしたからなんス! バカ兄は結果だけ見て俺を!」

「う、うむ」

「挙げ句、こんな暴虐! 許せませんよ! 許せませんよね!? 俺の依頼を受けてくださいセンセイ! あのバカ兄に思い知らせてやってください! 二本だ!」

 ロータスクードは猛烈な勢いで端末を操作する。アイの端末が鳴った。振り込まれた前払金は、センジュカンノンが提示した額より0が二つほど多い。

「……いいだろう……最善を尽くそう」

 勢いに押し切られ、アイは依頼を受諾せざるを得なかった。
 幾度となく死線をくぐり抜けた傭兵のカンが、この仕事がロクな結果にならないであろうことを知らせていた。
 ……依頼主が殺されタダ働きになった。偽の依頼で誘き出された。敵の数が情報の倍だった。協働の傭兵が襲いかかってきた。そういった苦い記憶が甦る。

「……今さら、引き下がれるものか」

 アイは傭兵のカンを黙らせる。彼女はこの仕事に、カネ以上の意味を見出していた。
 互いに憎み合う兄弟ヒーロー。彼らは納得ゆくまでぶつかり合わねばならぬ。今やアイは奇妙なセンチメントを感じている。

(無慈悲な傭兵が、感情に振り回されるなど)

(でもアタクシは、そんなアイのことが気に入ったから一緒にいるの)

 茨姫が無邪気に言った。アイは答えず、ただ妖刀の束を撫でた。隣を歩くハナもアイに擦り寄る。……心強い戦友達だ。アイはキアイの漲りを感じていた。

「……少しばかり邪魔するよ」

 直径2メートルの穴が開いたシャッターに、傭兵の逆光シルエット。センジュカンノンは危うく失禁しかけた。
 鋸刃めいた妖刀を逆手に持ち、甲殻類めいた鎧を纏う、表情を窺うことかなわぬその影の双眸だけが無慈悲に光った。

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