過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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777: ◆OJ5hxfM1Hu2U[sage saga]
2016/02/10(水) 16:54:54.67 ID:pyJOmbBoO
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 夕暮れ。ナカガワ・リバー河川敷で、二人の男が殴り合う。どちらも上半身は裸で、片や背中に、片や腰に、何らかの制御装置めいた小型機械。
 その身のこなしは今や互角にブザマだ。よろめくだけのステップで、腰の入らぬパンチを繰り出し合う。一目で彼らをヒーローと見抜ける者は多くあるまい。
 悲しくなるほどに無惨な光景を、芝生斜面に体育座りのアイはマグロめいた眼差しで眺めていた。
 傍らには超常の茨のツタで束ねられたサイバネ義肢18本が転がる。……然り。双子のヒーローは、全てを失うまで気付くことができなかったのだ。

(……だが、これで良かったんだ。生身で殴り合う今なら、全て二人で解決できるさ)

 疲労困憊のアイは独りごちた。力なく転がる抜き身の妖刀も金属シャコも、答えを返さなかった。
 脳裏をいつぞや聞いた地上の寓話がよぎった。……肉塊を奪い合う犬の兄弟は、狡猾なキツネによって破滅した。
 似たような寓話はアンダーワールドにも海底都市にもあった。犬がモグラやイルカに変わっていたものの、キツネに騙され破滅する末路は同じだ。
 予言者イソポは寓話の形で何を伝えんとしたのか。愚かな民を惑わすキツネとはまさしく……否、一介の傭兵たるアイにこれ以上言及する権利はない。

(だが、キツネが民を支配しようというなら)

 せめて民の導き手たるヒーローには……あるいは、モグラやイルカには、強く賢明であってほしいものだ。アイは願う。
 ……らしくない。アイは苦笑した。視線の先で双子の兄弟が、左右対称に倒れた。



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