過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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◆lhyaSqoHV6
[sagasage]
2016/02/25(木) 08:26:27.47 ID:rhio0V+5o
男「(まあいい、何れにせよ放ってはおけんよな……)」
男「(外傷は無い……となると何らかの疾病か、空腹で倒れたか……?)」
男「(だが、病気であるとするならば、こんな所で倒れているのは不自然だ……)」
男「(取り敢えず、食べ物を与えるか……確か、まだ握り飯があったはず)」
男はバックパックを漁ると、中からソフトボール大の球体と、金属の筒を取り出す。
今朝宿を発つ前に厨房を借りて握った塩むすびと、白湯の入った水筒だ。
男「ほら、食べなさい」
それを、目の前の少女に差し出した。
「人間に、施しを受けるなど……!」
「(だが、このままでは……もはや動くこともままならぬ)」
「(この際、生血でなくとも……な、何でもいい……何らかのエネルギーを得ねば)」
少女はそれを力無く受け取ると、一口だけ齧りついた。
「っ!?」
すると、その顔に驚愕の色が浮かんだ。
「(な、なんだこれは……なにゆえ……私は……)」
知らず、その眼からは涙が溢れる。
「(こんなもの……下賤なる人間共が食んでおる餌ではないのか……)」
「(だのに、なぜこんなにも……美味い……)」
それを拭う事も忘れ、少女は握り飯を齧り続ける。
男「(可哀想に……余程ひもじい思いをしていたと見える)」
男「あまりがっつかん方がいい、胃が受け付けないかもしれん」
男「まだあるから、落ち着いてお食べ」
男は目の前の、食物を与えられしゃくりあげる少女に憐憫の情を抱き、慰するのだった。
──その後、男は少女に"葵"の名を与え共に旅を始めることになるのだが、それはまた別の話である。
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