過去ログ - 梓「憂、もう帰ろ?」憂「…………」
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118:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:38:37.59 ID:A/teO6r30
もう、帰ろう。
どうしてもその一言が言えないまま、梓はずっと窓の外を眺めていた。
地面がどんどん近づいて、景色が見慣れたものに変わっていく。
119:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:41:08.28 ID:A/teO6r30
*
帰らないと、ダメ?
帰りたくないよ。
120:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:42:04.28 ID:A/teO6r30
『わたしも…帰りたくなかった。
ずっと同じところを回り続けていたかったよ。
そうしなきゃ生きていけなかった。
そうしなきゃ耐えられなかった』
121:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:43:00.64 ID:A/teO6r30
目を閉じていても、わずかに触れてる肩を通して、身体から震えが伝わってくる。
わたしは目を開いた。
暗闇の中に、ぶるぶると全身を震わせながらそのまま膝を崩して前のめりに倒れこんでいる。
122:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:44:58.32 ID:A/teO6r30
潮はいつの間にか随分と引いて遠く離れてしまっている。
暗闇に潮の香りが鼻をついて、いま自分が海辺にいることを思い出させた。
少しだけ星が姿をあらわにしている。
123:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:46:11.26 ID:A/teO6r30
わたしはずっと追いかけていた。
追いかけて追いかけて、
124:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:49:09.38 ID:A/teO6r30
こんなに泣かせちゃうなんて、思わなかった。
よろこんでくれてるって、
支えになってるって、
そう思ってた。思い込んでた。
125:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:50:34.29 ID:A/teO6r30
『 』
126:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:51:43.43 ID:A/teO6r30
わたしは立っている。砂の上に立っている。
今いる場所は海の底じゃない。
いまわたし達がいるのは浜辺なんだ。
たとえ真っ暗でも、目の前には海と空が広がっていて、どこまでも続いているんだ。
127:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:53:11.51 ID:A/teO6r30
右手でヘアピンを抜き取って、波打ち際に放り投げた。
波がそれをさらっていく。
少しだけ風が吹いて前髪がなびいた。
128:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:53:53.42 ID:A/teO6r30
『梓ちゃん』
129:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:54:31.42 ID:A/teO6r30
わたしは小さな声で梓ちゃんの名前を呼んだ。
あだ名じゃなくて、昔どおりに、ちゃんと名前で。
130:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:55:50.23 ID:A/teO6r30
*
-spring side-
131:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:56:38.28 ID:A/teO6r30
「雨、やんでよかったね」
さっきからずっと、しゃがんだまま黙って目をつむっていた憂が、
132:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:57:44.43 ID:A/teO6r30
憂はしゃがんだまま、ふたたび目を閉じた。
なにを思っているのだろう。
133:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 02:58:33.99 ID:A/teO6r30
「でも仕方ないよ。桜は散るものなんだから」
「…うん。わかってる」
134:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 03:03:34.73 ID:A/teO6r30
遠くの方の空が暗い。
だんだんと黒い雲が集まって、ここも陰りだした。
「雨…、また降るかな」
135:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 03:05:06.79 ID:A/teO6r30
「…いつにする?」
「え?」
136:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 03:06:02.60 ID:A/teO6r30
ごめん梓ちゃん、ちょっとだけ待って。
憂はそう言ってカバンをあけ中をゴソゴソと漁ると、
リボンを取り出して口にくわえた。
それから頭の上で髪をひとつに集めて、リボンでしばり上げる。
137:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 03:08:16.15 ID:A/teO6r30
以上です。
長々とすみませんでした。
本当は2月22日の憂ちゃんの誕生日に投稿するつもりだったのですが、結局間に合わずその後もなんだかんだ直しまくってうちにひと月以上遅れてしまいました…。
憂ちゃんごめんなさい。
138:名無しNIPPER[sage]
2015/04/05(日) 09:57:53.19 ID:P/4N3KlLO
おつ
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