11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:13:21.81 ID:lE2tgw5So
さながら捨て子の泣き顔だった。
光を被けたことりの目は涙に汚され、腫れた目尻を赤くゆがめていた。
唇はもう言葉を形作ることもできず小さく開いたまま、
頬にはあの透き通る髪の幾筋かが濡れて張り付いたまま、
時折しゃくり上げては喘ぎに似た鼻声を洩らし、ただ私のことだけを待っていた。
その顔はあまりに幼く、迷子どころか、
堕ろされる間近の胎児を思わせた。
唇の血の気も薄れ、水に混じる夜風に肌がぴくんと震える。
腕の震え骨を伝って心臓の壁を鋭く刺す。
雨よりもつめたかった。
過ぎゆくバスが闇を残して去ったとき、私はその唇とことり自身を引き寄せた。
もう、そうするほかになかった。
私たちは塩の柱のように身体をこわばらせ、
身動きひとつ取れないまま、なけなしの体温を雨に溶かしていった。
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