32:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:22:39.95 ID:lE2tgw5So
「その、……ええと、衣装づくりですよ。デザインとか、どうやって考えてるのかなと」
ああ、と合点がいったことりはぱっと顔を明るめ、それから口元に指を当てて考え込む。
33:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:23:06.50 ID:lE2tgw5So
ぱちゃりと水面から反対の手が伸びて、濡れた指が私の頬をなぞる。
そのまま耳たぶをつまんでみたり、あごをくすぐってみたり。
「っ、またですか」「ほんっときれいだよねぇ」
34:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:23:33.05 ID:lE2tgw5So
そのまま顔をいいようにされながら、歌詞の書き方を捉えなおしていた。
窓の方を見ようにも、首や頬に動く指先が邪魔してうまくいかない。
目を閉じた方がずっと楽だった。
35:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:24:00.08 ID:lE2tgw5So
「その、私の歌詞の話です。
うまく言えませんが、きっと私の心が考えて、手が書いているんです」
私の奥深くの、自分でも分からない場所の声を、手が聞き取っている。
36:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:24:26.66 ID:lE2tgw5So
――ここに、海未ちゃんのこころがあるの?
ことりはそのまま目を閉じて、私の心拍を聞いていた。
載せられた手に何かを伝えようと、私の心拍が大きくなる。
37:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:24:53.22 ID:lE2tgw5So
瞼の闇の向こう側で、ぽつりぽつりと聞こえる。
わたし、怖かったの。
海未ちゃんがそこにいるのに、いないみたいで。
38:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:25:19.75 ID:lE2tgw5So
目は開けなかった。
ことりが私に触れているうちは、目を開けなくても大丈夫だった。
瞼を閉じてもそこに淡い一人分の熱があって、心臓が動いていて、手で繋がっている。
39:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:25:46.31 ID:lE2tgw5So
ことりの心拍に触れた。
まっさらになって、指先の振動を感じてわずかな声を聞いた。
やっと、やっときてくれたぁ! 触れた場所からことりが溶けだしていく。
40:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:26:12.89 ID:lE2tgw5So
蒸気と交じった眩しさが、今は身体に心地いい。
私の手は、身体は、ことりの形をはっきりと覚えている。
窓の外はまた少し雲が掛かっていて、誰にも見られなかった。
41: ◆vbpyFPr4FI[sage saga]
2015/04/05(日) 18:26:49.81 ID:lE2tgw5So
すべては水の中、まだ誰にも見えない所。
そこで二人は繋がっていられる。
でも、さすがに風呂のお湯が冷めてしまう。
もう一度目を閉じて開ける頃には日付だって変わるだろう。
46Res/29.88 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。