96: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:13:06.30 ID:oTtoOkGR0
細い腕に似合わない力で顔を挟まれる。
……首が動かせない。
もとより動かそうにも、ヘビににらまれたカエルのようにわたしの身体は固く緊張していたのだけれど。
97: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:14:10.38 ID:oTtoOkGR0
とりあえず、この場はそうだと答える。他に言いようがあるわけでもない。
「……じゃあ、どのあたりで目を覚ましたのかな」
98: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:15:47.38 ID:oTtoOkGR0
……あれ。
今、なんて考えた?
99: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:17:28.17 ID:oTtoOkGR0
思い返そうとしても、わたしの中にそんな記憶はない。
いや、それどころの話ではない。
記憶がない。
100: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:18:38.01 ID:oTtoOkGR0
頭をがつんとハンマーで殴られたような衝撃。
あるいは、足元がいきなり崩れてしまって、真っ逆さまに落ちていくような。
頭がくらくらする。
101: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:20:13.03 ID:oTtoOkGR0
「――しっかり!」
はっと意識が帰ってくる。
声が頭の上から聞こえる。いつの間にかわたしは座り込んでいた。
102: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:21:03.96 ID:oTtoOkGR0
「……だいたい事情はわかった。このティアラのことはもう気にしなくていい」
今までとは全然違う、やわらかい、優しげな声。
103: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/05/24(日) 22:24:02.23 ID:oTtoOkGR0
その後。
わたしが落ち着くまで、それからさらに30分くらいの間。
彼はずっと、わたしの背中を支えてくれていて。
104: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/06/24(水) 23:09:56.22 ID:AHPbg9Pk0
――12月25日。俺と桃華の初めてのライブは無事に終わった。
桃華が初めてわがままを言ったあの日。結局桃華は、東京の別宅には帰らなかった。
ライブで疲れて眠ってしまったので、女子寮の桃華の部屋に寝かせたなどともっともらしい嘘をつき。
俺たちは、誰もいなくなった事務所で二人、クリスマスを祝った。
105: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/06/24(水) 23:12:13.46 ID:AHPbg9Pk0
クリスマスと言うと、日本ではおおむね恋人たちの夜だと認識されている。
どこにそんなに潜んでいたのかと言いたくなるほど、カップルがうじゃうじゃと湧いて出てくる日だ。
しかし本来の、欧米でのクリスマスというのは、家族で過ごす日なのだ。
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