6: ◆XmxU5oRmnc
2015/04/16(木) 16:08:41.42 ID:dpPJnMuC0
……そして、そうやって芸能界の階段をどんどん駆け上がっていっていた、その頃。
私は、自分があることに気付いた。あることを、思ってしまった。
――どうして私は、こんなことをしているんだろう。
そう思うと、ダメだった。
もう、何もできる気がしなかった。
そんな私の不調に、事務所はすぐに気付き、適当な理由を付けて仕事を休ませた。
それまで私はTVの画面上だけでなく、芸能界の大人たちに対しても『子どもらしく』あった。
それだからか、私が仕事を休んでも、素直に心配してくれた。優しく納得してくれた。
もし私が生意気な子どもだったとすれば、私はすぐに干されることになってしまっていただろう。
また『我がまま』かと思われて、呆れられてしまっていただろう。
でも、私が『子どもらしく』あったが故に、私の休業は許されたのだ。
世間は『子ども』を求めている。それは芸能界の大人たちも例外ではない。大人たちも、私のことを『子ども』として見ていたのだ。
いくら華やかではないと言っても、芸能界の人間も、同じ人間だ。それなら、子どもには優しくても、『理想的な子ども』には優しくても、きっと、おかしくないだろう。
そうして私はTVに出ることがほとんどなくなった。どうしてか、モデルとしての仕事は続けさせられた。事務所にも何らかの考えがあるのだろう。でも、そんなことを考えても仕方ない。私は、大人の思うままに、大人が理想とする子どもでいるだけだ。
モデルを中心に、たまに、TVやドラマに。
それが、私。
岡崎泰葉。
そんな名前の、『子ども』だった。
……私が『彼』と出会ったのは、そんな頃のことだった。
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