1:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:25:43.93 ID:Gk/WojOoo
私と同世代の人に「ピーターパン、知ってる?」と言うと、
その人は「ああ、ピーターパンね」と懐かしそうに笑うだろう。
昔(と言うのも少し抵抗があるけど)、私はテレビの前へ張り付いて動かなかった。
家族になんと言われようと、週に一度のその日だけはチャンネルを譲らずに、
ピーターパンが飛び回る魔法の世界にときめいていた。
始めは、教養番組のちっぽけなマジックショーだったネバーランド。
ふざけて箱に入ったティンカーベルが消えてしまって、
ピーターパンが悲痛に叫んだときは、目をぎゅっとつむって必死に祈ったものだ。
消えないで、ティンカーベル!
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:26:22.90 ID:Gk/WojOoo
童話的な演出を凝らしたマジックショーは、子どもだけじゃなく大人にも人気があった。
人気が上昇するにつれて、どんどん大掛かりなステージでマジックを披露するようになった。
ステージが変わっても、ピーターパンは空を飛んだし、ティンカーベルは消えて、みんなの祈りで戻ってきた。
ネバーランドのマジックショーに終わりはないんだと、誰もが思っていた。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:26:51.50 ID:Gk/WojOoo
私は一月前に始めたバイトの初任給でそのチケットを買おうと思っていたけれど、
あまりの人気で買えなかった。苦い思い出。
その大掛かりなショーを区切りに、ピーターパンは居なくなってしまった。
アタシも、噂で聞いただけなんだけどね、と友だちは話してくれた。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:27:28.42 ID:Gk/WojOoo
――信じたものがそこにあるのさ。
私はそんなピーターパンが大好きだった。
5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:28:09.03 ID:Gk/WojOoo
――――
そして、大好きだったピーターパンは、今は私のプロデューサーをしている。
ピーターパンだった頃の彼を正確に覚えている自信はないけど、
今のプロデューサーさんはあの頃と同じ少年のような顔つきへ、微かに青年らしさを滲ませている。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:28:35.22 ID:Gk/WojOoo
着替えを済ませて事務所へ戻ると、二人のアイドルがプロデューサーさんを囲んでいた。
プロデューサーさんは集まる視線を手繰るように、手の上で平打ちの指輪を転がしている。
「いいかい、種も仕掛けもないよ」
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:01.12 ID:Gk/WojOoo
「じゃあ、これから不思議な魔法で指輪を探そう」
二人にせっつかれて、プロデューサーさんはまたウムムと唸り始めた。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:30.76 ID:Gk/WojOoo
「ここにあった」
手のひらの上に指輪がキラリと光っている。二人は再び沸き立った。
もう一回もう一回とせがむのをなだめて、プロデューサーさんは指輪を指へはめた。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:56.28 ID:Gk/WojOoo
「ナナはとっくに準備していたんですけど」
「それならそうと言ってくれれば」
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